内容説明
批評の言葉はいま停滞する時代の厚い層のなかを通過している―80年代へむけて批評の現在を告知する「批評について」を序に、著者が青年期に心から没入し読みふけった太宰治、小林秀雄、横光利一、芥川龍之介、宮沢賢治についての論考を収める。ここには日本の近代におけるすぐれた資質の演じた悲劇が、生涯と作品を通して克明に読み解かれている。文庫化に際し、さらに補筆修正がなされた。
目次
太宰治
小林秀雄
横光利一
芥川龍之介
宮沢賢治
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
あかつや
8
吉本隆明による作家論。著者がその人生で影響を受けたという5人の作家・批評家について論じている。吉本読むのは学生の時以来だったが、いやあ読ませるねえ。あんまり面白くて惹きこまれちゃって、思わずよく考えずに諸手を挙げて受け入れてしまいそうになる。危ない危ない。特に好きなのは小林秀雄論かな。「文章は個性的な必然で書かれることもあるが、時代の雰囲気の必然に促されることもある」そうそうこれこれって感じ。小林はそういう所があるし、誰だって大なり小なりそれの影響から逃れられない。文章に限らずだけどこれは意識しとかんと。2019/01/07
にしの
3
あまりの密度に圧されて二ヶ月はかかった。吉本隆明の最高傑作は言われたら私はこれを選ぶ。執念とよぶのも生ぬるい、もうもうと湯気のわき上る熱と迫力を感じる。なのにその切っ先、その目、冷徹な理路はあまりにも怜悧でやってられない。泣きたい。序からしてこの密度を読まされる身にもなってほしい。横光利一、太宰治、芥川龍之介、夏目漱石、宮沢賢治、誰もが認めるビッグネームだが、文学を存在の本髄にするかれらの懐中の悲劇を、それこそが文学の生であり死である場所を、憑かれた様な解像度で抉りだす。一言で言うなら関係性の病理だ。2021/12/14
じめる
1
吉本隆明による、作家論集。最近作家論というものにあまり触れていなかった(触れたとしても、作品論の中でついでのようにくらい)ため、変な言い方だけど最初は感覚を取り戻すのに時間がかかった。そうして読み進めていくうちに、そこに作家に通底する、または変容していく課程が見られてとてもおもしろかった。作家論も、作品論の積み重ねの上になるものということすら忘れていた。こうやってみると、宮沢賢治と芥川龍之介がとても魅力的に感じ、また新たな姿勢で向かえる気がした。2013/04/14
あだこ
1
悲劇を演じた作家たちを論じているが、その根底にはかれらに対する深い同情のようなものがある。それこそが作家の、そして作品の流れるような理解を可能としているように思える。文学を批評することに自覚的であることもまた。2009/11/06
たむらんちょ
0
難解。ぱらっとしか読めず。いつか再挑戦。2012/05/05