内容説明
カランコロンと駒下駄の音を響かせてお露の幽霊が店…。名人円朝の高名な『怪談牡丹灯篭』と、背景となる舞台、季節感の設定に独特のうまさをみせる『怪談乳房榎』の二篇。語り口そのままに記した速記を収録。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
耳クソ
17
どんな不可能をも無視して寸断されない網が物語の筋として人間関係の線を結んでいく。それだけ世界が世界観としても現実としても狭い時代だったと言ってしまえばそれまでだが、網の中で絡め取られた善と悪が、規範から少しずれてしまう人間たちの言葉によって相対化されていくなかで、それでも最後に「勧善懲悪」に至らなければ物語は物語の主体としてはたしかに成立しない。網目の余白をちらつかせながら、それでも網としての機能を果たしながら物語に収斂されていく。その物語化への衝動が私にはとても気になる。幽霊のように忘れられないでいる。2022/02/22
Terry Knoll
3
ふたつとも三遊亭圓朝作の敵討・怨恨話。 「乳房榎」は師匠の妻と懇ろになった弟子が、絵師(師匠)を殺害。霊となり龍の襖絵を仕上げ落款をおすという怪談話。後半で幼い息子が霊魂の力を借りて父の仇をうつ。 圓朝の高座の速記録を本にしたもので読みやすく、気品がある日本語です 情景が浮かんできます。 明治の言文一致運動に大きな影響を与えたそうです。 2015/05/02
桑畑みの吉
2
落語家三遊亭圓朝(1839-1900年)の怪談噺2作品を速記本として1880年代に刊行したもの。日本文学史としては「言文一致運動」に影響を与えた記念碑的作品でもある。誰もが知っている「牡丹灯篭」であるが、意外にも怪談部分はごく僅か。全体の10%位であろうか、残りの大部分は極悪人たちが跋扈し、仇討ちや母子の人情が入り乱れる複雑なドラマとなっていた。「乳房榎」も同様に怪談色は少なめ。師匠を裏切った浪人が悪事の限りを尽くす展開だった。2作品とも、恐ろしいのはあの世の幽霊ではなく、この世の人間たちだと思った。2022/12/05
みつひめ
1
もうすぐ赤坂大歌舞伎が始まる!ということで、「牡丹灯篭」だけ読んで放置してあったのを引っ張りだして読了。「乳房榎」を読みながら、前に見た勘三郎さんのや、勘九郎さん(勘太郎時代の)のを思い出した。さあ、今度の勘九郎さんはどんな芝居を見せてくれるのかしら?!2013/03/03
koishikawa85
0
牡丹燈籠は岩波文庫で読んだので、乳房榎のみを読む。おそらく再読。2014/09/20