出版社内容情報
テイリッヒ『組織神学』に基づき聖霊論を再構成し存在と生の問題を探求した神学研究。
内容説明
20世紀組織神学を代表する成果の一つは、ティリッヒ『組織神学』全三巻であることは万人の認めるところだが、ティリッヒ自身はその完成前に、「できたら自分の神学を聖霊論から再構成してみたい」と語っていたというエピソードは面白い。ティリッヒ神学研究をライフワークとし、既に『ティリッヒ組織神学の構造』(1971)、『ティリッヒの人間理解』(1986)の秀作を著わした著者(神戸女学院大学名誉教授)は、ティリッヒの遺した言葉の示す線と方向を真剣に模索したあげく、ティリッヒの「存在」理解の基礎の上にある生の理解の追究を試みながら、それに応じる霊の働きの展開を把握することに努め、それと共に時間論と聖霊論そのものへの展望の可能性を真剣に探ってやまなかった。本書はその探求の成果の見事な提示である。
目次
第1章 存在理解
第2章 存在の力
第3章 「存在それ自体」
第4章 生と霊の働きとの関係
第5章 生と救い
第6章 身体の理解
第7章 生と永遠のいのち
付録(ティリッヒの「時の神秘」について;私たちの人生と霊との関わり―ティリッヒ神学における聖霊論の特色)
著者等紹介
茂洋[シゲルヒロシ]
1930年生れ。神戸女学院大学名誉教授、日本基督教団仁川教会前牧師。神学博士(同志社)、Doctor of Ministry(Vanderbilt)
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感想・レビュー
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うえ
7
「ティリッヒは、永遠の祝福を否定的なものの永遠の克服として受け止めている…実存下における苦難と闘いを通じて、すべて存在するものの否定的なものの否定の後に、本質的存在のゆたかさが示される。そこで、ローマの信徒への手紙八章にある、すべて被造物は虚無に服すけれども、ほろびの隷属から解放されて、神の子の栄光に輝く自由にあづかることができると、主張する。したがって永遠のさばきはあり得ない。つまりこの世に存在するものすべては、永遠的なものと、目的論的な関係をもっている。そして人間のみが、それを知ることができる」2019/05/23