出版社内容情報
優れた音楽家の演奏の歴史は,最も優れた音楽の批評史でもある。トスカニーニ,クレンペラー,ホロヴィッツ,リヒテルら偉大な演奏家の解釈の地平を今日的視座から読み解く。
内容説明
我々が聴くのは、つまるところ、批評意識としての現われとしての音楽なのであり、けっして音符の忠実な再現としての音楽なのではない。その意味で、優れた音楽家の演奏の歴史はもっとも優れた音楽の批評史である。演奏家は、世界でもっとも孤独な、そしてその孤独の中にこそ喜びを見出す批評家を、自身の内部に飼い続けなければならないだろう。孤独だと言うのは、彼等の自由は楽譜という必然によって縛られており、しかも演奏家という存在が華やかであればあるほど、彼等の内なる批評性はカーテン・コールの騒音にかき消されるからであり、喜びだと言うのは、その必然の中にこそ彼等の自由があるからである。音楽批評の新たな地平を切りひらく気鋭の論考。
目次
1 指揮台の帝王学(フルトヴェングラー―時代精神としての音楽;チェリビダッケ―交響的還元のゆくえ;クレンペラー―越境する野人;ベーム―職人芸の明暗)
2 鍵盤の憑依者達(グールド―よるべなき時代のモノローグ;ホロヴィッツ―臨界のピアニズム;ブレンデル―自問する風景;リヒテル―封印された自存)
3 科学時代の神話(トスカニーニ―客観という名の迷宮)
著者等紹介
和田司[ワダツカサ]
1951年、函館市生まれ。東京外国語大学ロシヤ語科卒、早稲田大学文学研究科(ロシヤ文学)博士課程中退。翻訳家
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