内容説明
昭和60年9月、喉より30メンチ近い食道の奥に、悪魔の病巣が確認され、私はとうとう食道切除という大手術を受けることになった。再び目覚めたのは、手術を終わって5日目の朝であった。私の目にはいっぱいの涙が溢れ、その向こうに朝空が、七色の虹をとかしたように、こよなく美しく見えた。「生きてる。生きているぞ!」この感動を誰かに話したい、生きている証しを1人でも多くの人びとに話したいと思った。ともに病魔と闘い、死んでいった名もない戦友たちの「生きたいなあ」という叫び―私は生あるうちに、なお彼らの思いを受け継いで、書き続けなければならない。
目次
1 花語(はながたり)
2 風語(かぜがたり)
3 夢語(ゆめがたり)
4 陽語(ひなたがたり)
5 傷語(いたみがたり)