内容説明
札幌地検に激震が走った。30年前に小樽で発生した母娘惨殺事件に前代未聞の再審請求が起こされたのである。すでに執行済みの死刑が、もし誤判だったら、国家は無実の人間を殺めたことになってしまう。「何としても握り潰せ!」担当に指名されたのは、曰く付きの検事。司法の威信を賭けた攻防の行方は…。
著者等紹介
青木俊[アオキシュン]
1958年生まれ。横浜市出身。上智大学卒業後、82年テレビ東京入社。報道局、香港支局長、北京支局長などを経て、2013年独立(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
しんたろー
205
青木俊さん初読み。ショッキングな冒頭から淡々と展開する冤罪のストーリーは、現実事件を絡めて描いているのでノンフィクションのような臨場感がある。更に検察側と弁護側の攻防が二転三転し、手に汗握って読み進めた。人物の個性もリアルな人として目に浮かぶのも良かった。ミステリとしてフェアに犯人設定しているのも好感が持てる。欲を言えば、あと30~40ページ程増やして、各人の心情に厚みを持たせれば、深く感動できる作品になったと思う。それにしても、 昔のDNA鑑定が不完全で、数々の冤罪を産んでいる可能性にゾッとした!2017/12/12
🐾Yoko Omoto🐾
162
無実を訴え続けた男の死刑執行の裏には、面子や権威の失墜回避だけを重んじ冤罪を生む司法の闇があった。父の無念を晴らすためだけに15年を費やしてきた娘、彼女を全力でバックアップする弁護士たち。国家権力との壮絶な戦いは、現実の足利事件を絡めたノンフィクションさながらのストーリーで、検察官や裁判官という国家の正義であるべき組織が、これほどまでに信用ならないものなのかと、絶望的な思いが込み上げる。起訴された人間を何があろうと有罪にせねばならぬ、その間違った仕組みがある限りこれからも決して冤罪は無くならない。➡(続)2017/09/15
nobby
148
既に死刑執行された事件の冤罪証明にむけて、“爆弾”証拠が見つかったという噂。その揉み消しに全力いや必死になる検察と、ただ父親の確かな無罪を示すため全てを投げ打つ覚悟の娘。司法の専門的内容は濃いが、白熱の分かりやすい展開に思わず一気読み。それにしても、もう何だかよく分からない…自分達の安全を守り、承認・自己実現を叶えるための国家制度が、いつぞやか私欲の糧となる現実。同時に個人・組織・周囲が必要以上に追い詰める様が、結局自分達の窮屈や危機に繋がり自ずと首を絞めている。最後に裁くことができるのは神か、それとも…2018/05/06
utinopoti27
148
初期のDNA鑑定の不完全さが証明され、冤罪が作られた足利事件をヒントに、本作は、もしも容疑者がすでに死刑を執行されていたら・・そんな想像を発展させた推理ミステリです。父親の無罪を信じる娘と、人権派弁護士たちの執念により動き出した再審への扉。そうはさせじと、危機感を募らせる検察が繰り出す徹底した妨害工作の数々。スリリングな攻防に終止符を打ったのは、やはり人間の良心なんですね。ただ、真犯人への到達が少し強引すぎたのは気になるところ。重厚なテーマを扱った作品だけに、もっと含みを残した収束でも良かった気がします。2018/02/22
いつでも母さん
146
何が『灰色の無罪』だ!無罪になっても誰もが無実を信じるわけではないと『殺人犯はそこにいる』(清水潔) が示している通りの現実がここにもあった。このところ優しい顔した奴・真面目な顔して傍にいる奴が犯人だったりの作品を続けて読んでるなぁ(意図はない)しかし、反吐がでそうだよ。この国の司法はどこを向いているのだろう。幼い時に躾けられなかったかい?間違えた時は正直に「ごめんなさい」するんだよと。隠そうとすると嘘を重ねることになるだろうに。報道にも怒りは向く。誰の為の報道なのだろう。冤罪死刑は酷過ぎる・・2017/08/07