内容説明
動物というものは、かわいいものです。もし、この世の中から、動物たちがいなくなったら、わたしたちの人生は、どんなにあじけないものになってしまうでしょう。動物たちは、人生をうるおす、きれいな流れであり、いこいの木陰をつくってくれるしげみであり、ほほえみをあたえてくれる花園であります。そういう動物たちを主題とした小説が動物文学です。みなさん、動物の物語をたくさん読んで、もっと、もっと、よく動物を知ろうではありませんか。
著者等紹介
戸川幸夫[トガワユキオ]
1912年、佐賀県に生まれる。旧制山形高校(現・山形大学)卒業。新聞記者を経て、創作活動に入る。動物を主人公にした「動物文学」というジャンルを確立し、椋鳩十と並び称されるようになる。1954年に『高安犬物語』で直木賞、1968年「戸川幸夫子どものための動物物語」(国土社)でサンケイ児童出版文化賞、1977年に「戸川幸夫動物文学全集」で芸術選奨文部大臣賞を受賞。多数の小説や児童文学作品を手がける。2004年、92歳で死去(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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inarix
11
昭和初期。旧制高等学校在学中の「わたし」は、当時幻となりつつあった高安犬の存在を知る。滅びゆく種族をなんとか残したい。その一心で山形県内の日本犬を網羅した「わたし」は、ついに純粋な高安犬最後の一頭「チン」に出会う。中型だがガッチリした体型。雪山を幾日も歩き続ける我慢強さと熊にも立ち向かう逞しさ。自然の中で生まれ育ち鍛えられたマタギ・吉蔵と彼が育てた誇り高き「チン」。そして日本犬の保存に尽力する人々との交流を描く戸川氏初小説作品にして直木賞受賞作。滅びゆく種への尽きない興味と愛情、もの悲しさを感じる動物文学2021/08/02
カープ青森
6
戸川幸夫氏の作品は小学生の頃に教科書で読んだ『牙王』『爪王』以来かな。あの頃は椋鳩十氏やいぬいとみこ氏の動物のお話を読みまくっていた。さて、本作ですが、今はもう残っていない高安犬「チン」のお話。彼の人間以上に侠気に溢れ強く誇り高く威厳のある描写も見事だが、当時の自然や野生というものに溶け込んだ人々の暮らしぶりの描写にもしんみりとした。この先もずっと読み繋いでほしい心に沁み入る作品だと思った。2022/02/01
ポメ子
4
新聞で高安犬の記事を読んだので、積読本を手に取った。 写真で見る限り、高安犬は、可愛らしい顔をしているが、勇敢で、クマと戦ったり、土佐犬と喧嘩したり、強い犬のようだ。もういなくなってしまったのは、残念だが、いつかゆかりの犬の宮に訪れてみたい。もう一つ所収されている、クジラ捕鯨の「火の帯」も良かった。2021/12/31
コラ・コーラ
3
私の尊敬してやまない師匠が、子供の頃から大好きで何度も繰り返し読んでいると紹介していらっしゃった本。犬は自分を大切にしてくれる主人に忠実で、決して裏切らない。それだけに切なく胸にキュンときました。2015/12/16
うずら
3
写真のチン、そして石田武雄さんの描くチン。賢そうな顔、凛としたたたずまい・・・やっぱり日本犬っていいです。小さいころ大好きで繰り返し読んでいたシートン動物記の挿絵も石田武雄さんが描いていたと知って、感激♡2011/07/17