出版社内容情報
新型コロナ禍の今、未知の感染症に人類はどう立ち向かうのかを問う。第24回日本ミステリー文学大賞新人賞受賞作。
内容説明
「馬が凶暴になってるだけの問題じゃないの。馬インフルエンザが新しい、未知のタイプに変異している。つまり、種を超えて広がるかもしれない兆候があるってことなの」2024年、欧州での新型コロナ感染拡大を受け、夏季五輪は再び東京で開催されることになった。だが、日本馬術連盟の登録獣医師・一ノ瀬駿美が参加した五輪提供馬の審査会で、突然、複数の候補馬が馬インフルエンザの症状を示し始める。ウイルスの正体は過去に例を見ない「新型馬インフルエンザ」。感染した馬を凶暴にさせてしまう「狂騒型」だった。五輪は無事に開催できるのか、そして新型馬インフルエンザの先に現れる、もう一つの恐ろしいウイルスとは―。獣医師で大学教員の著者にしか描けない、理系ミステリーの新境地!第24回日本ミステリー文学大賞新人賞受賞作。
著者等紹介
茜灯里[アカネアカリ]
1971年3月27日、東京都調布市生まれ。東京大学理学部地球惑星物理学科、同農学部獣医学専攻卒業。東京大学大学院理学系研究科博士課程修了。博士(理学)、獣医師。全国紙記者、国際馬術連盟登録獣医師などを経て、現在、大学教員。『馬疫』が第24回日本ミステリー文学大賞新人賞を受賞し、デビュー(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ちょろこ
160
ウイルスミステリの一冊。舞台設定はちょっと未来の五輪開催を控える2024年。新型馬インフルエンザが発生し馬が暴れ始めた。女性獣医師がこのウイルス、変異ウイルスの謎に迫るミステリ。章タイトル通り、馬の歩み同様にいざなわれ終盤は馬が疾走するかのような爽快な駆け抜け感。獣医師、国立感染症研究所、様々な立場と利権が絡み合い、このウイルスの元を追求し真実に立ち向かう過程は現実と錯覚しそうなほど読み応えあり。人類と感染症の闘いは永遠のテーマなんだろうな。駿美の言葉は最高のパワーワード、清々しい読後感だった。2021/03/22
aquamarine
81
東京五輪の連続開催を控えた2024年の日本で、新型馬インフルエンザの発症が確認される。ウイルスは馬が暴れヒトを襲う「狂騒型」。国際関係、立場、隠蔽、改変される報道…ウイルスは変異し、また別の要素を持ってヒトを恐怖に叩きこむ。専門的だが説明はわかりやすかったし、単なるウイルス制御の物語ではなく、人間関係や私欲の絡んだサスペンスで読み応えもあり、夢中で一気に読んだ。欲を言えば、せっかく五輪に絡めた馬の話なので、馬の暴れる姿だけでなく、颯爽と駆ける姿をもっと見たかった。新人賞受賞作ということなので今後が楽しみ。2021/03/01
ゆのん
70
時は2024年。日本ではコロナが終息している。パリでは今なおコロナが蔓延している為、2024年も日本でオリンピック開催となる。そんな背景の中、馬インフルエンザが発生するが…。重たく堅い内容かと読み始めたがもの凄く面白かった。主人公の馬への愛情も読んでいて暖かい気持ちになる。感染経路の究明や、ワクチン開発の緊張感、保身や、つまらないプライド、隠蔽などなど読みどころ満載。サスペンス要素もあり、ハラハラしてしまうシーンもあって少しも飽きさせない。本当に面白かった。2021/02/09
さっちゃん
46
2024年、東京五輪の連続開催を控える日本で「新型馬インフルエンザ」が発生。感染馬が暴れ、ヒトを襲う「狂騒型」のウイルスだった。やがて感染は犬やヒトにも広がりをみせる。緊迫感あるスピーディーな展開で、ラストまで一気に読まされた。ワクチン製造や感染収束に奔走する者、忖度、隠蔽、妬みなど私利私欲で動く者。競走馬や競技馬のことはよく知らない私でも読みやすく、まるで現実の出来事のようだった。結局、ヒトが一番怖くて厄介なのかもしれない。2021/02/21
それいゆ
44
私には読みにくくて退屈な作品でした。理系ミステリーというキャッチコピーですが、馬のインフルエンザの話が延々と続き、衝撃的な展開でもなく、この程度で日本ミステリー文学大賞新人賞なのか?新型コロナウィルスに繋がる話なのかと期待してワクワクしながら読み始めましたが、そういう話ではなかったのですね。恩田陸、篠田節子らの選考委員はどれだけ真剣に審査したのだろうか?はなはだ疑問です。2021/04/15