出版社内容情報
矢野隆[ヤノ タカシ]
内容説明
慶応元年(1865)。祇園山笠に命を賭ける「のぼせもん」たちは、いつもどおり祭りの準備に余念がない。一方、尊王攘夷派と佐幕派に藩論が二分した黒田藩では、筑前勤王党が起死回生を狙い、策を練る。追い山の英雄にして、町の人気者・大工の九蔵と、筑前勤王党の中心人物・月形洗蔵は、互いを友と認めつつ、どうしようもない隔たりも感じていた―。
著者等紹介
矢野隆[ヤノタカシ]
1976年福岡県生まれ。2008年、『蛇衆』で第21回小説すばる新人賞を受賞。以後、時代・伝奇・歴史小説を主軸に、多彩な作品を次々と刊行している(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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いつでも母さん
92
幕末の博多・山笠。時代は転換期。そんなこたぁどうだっていいんだ!自分を「ただののぼせもんやけん」という漢・九蔵が良い!とにかく良い!惚れてまうやろ~!今年もそろそろそんな季節がやって来た。博多の街が熱いのを体中で感じてみたいものだ。2017/06/06
なゆ
50
ちょうど山笠の期間に見つけた。なんとタイムリー!追い山に合わせて読み終わろうと思っていたのだが…。幕末の山笠とのぼせもん達の熱気という〝陽〟の部分と、尊王攘夷を唱える筑前勤王党の運命という〝陰〟の部分が私の中ではうまくこなれなくて時間かかった。というか、この頃の福岡藩の話はもやもや歯がゆいんですね。月形洗蔵という人は、もしかしたら後世に名を残したかもしれないのにと。純粋に山のぼせの熱気にあてられたかったかな。この頃は今のスタイルとは違う山笠だったよう。けど、のぼせもん達は今も昔も変わらないんだろうな。2017/07/17
サケ太
10
のぼせもんに惚れた。700年の歴史を持ち、現代にも続く博多祇園山笠。幕末の世にも山笠の事ばかり考えて生きてきた男たち、のぼせもんがいた。のぼせもんである大工の九蔵。その義理の息子心太。博多に流れ着いた医者の息子杉下風馬。それぞれの視点で描かれる幕末。尊皇攘夷を志し黒田の中で奮闘する月形洗蔵。身分は違えど心を通わせる九蔵と洗蔵。しかし、時代の荒波とともに二人は互いの間にある隔たりを感じることになる。理想を追い求める男。自分に嘘をつかない男。形を変え、今に残っている。その想いと熱さ。これは一度見に行きたい。2017/06/06
Shinobu Asakura Yamamoto
1
幕末、長州と薩摩に挟まれ翻弄された福岡黒田藩と、博多山笠命の町人との熱い話。尊王攘夷に揺れる武士ものや、幕府側の新撰組などの話は多々あれど、侍とピュアな町人が絡む話はあまり聞かずその視点は面白い。度々入る馬さんの回想録がややうざい(いらないかも?)が、ただの町人でない、異常なほど祭り命の熱い「のぼせもん」と、国のためという名目の侍と、双方自分勝手だが必死で生きぬいた者たちの哀惜と羨望が描かれている。 このところ、坂崎空也の西国修行ものと立て続けに読んでいるので、頭の中がずぅーっと九州弁。 よかろもん!!2019/03/01
きゅー
1
書店で見かけた時にこれは読まないかんでしょう!と思ったものの、今頃になってしまった(^^;) 山笠話ではあるものの、幕末の動乱と絡めてあったので、若干物足りず。もっとこってこての山笠話かと思ってたんだけどな~。私が男だったら山のぼせになってたと思うのだが、九蔵さんほどの信念は持てないだろうな~。芯のある人は強いね。それにしても、高さのある山が走るの、やっぱり見てみたいな。電線もビルもない町中を駆け抜ける山を想像しただけで胸躍るわ~2017/10/26