内容説明
島根県出身の細菌学者・秦佐八郎(1873~1938)。現在の日本ではそれほど知られていないが、当時難病だった梅毒の特効薬「サルバルサン」(世界初の抗生物質)を、ドイツのパウル・エールリッヒ(ノーベル生理学・医学賞受賞)と共に開発し、多くの人の命を救った男である。その秦佐八郎の人生を、現代の感染症界のエースであり、同じ島根県出身の岩田健太郎が、ノンフィクション・ノベルとして描きだす。佐八郎と当時の名だたる研究者との交流や葛藤、また彼らの生き様を通して、研究とは何か、実験とはどういうものなのか、科学者として頭がよいとはどういうことなのか、研究者に特有のプライドや競争意識と研究倫理など、現代に通ずるテーマとして問いかける。
著者等紹介
岩田健太郎[イワタケンタロウ]
1971年島根県生まれ。島根医科大学(現・島根大学医学部)卒業。沖縄県立中部病院、ニューヨーク市セントルークス・ルーズベルト病院、同市ベスイスラエル・メディカルセンター、北京インターナショナルSOSクリニック、亀田総合病院を経て、2008年より神戸大学。神戸大学都市安全研究センター医療リスクマネジメント分野および医学研究科微生物感染症学講座感染治療学分野教授。神戸大学病院感染症内科診療科長(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ふろんた
20
まさかのノンフィクション・ノベル。リアリティを出すための小説であれば良かったのだが、途中から何でこの人が?っていうのが出てきて、ノンフィクションの部分から徐々に乖離してきたような。2015/04/07
モモのすけ
8
「『他人の視線』を一切気にしなくなると、とても生きているのが楽になるのよ。解放されるわ。自由に生きるとは、他人の視線から自由になるということなのよ」2015/04/14
ネコタ
6
世界初の抗生物質を作った秦佐八郎の伝記のようなものだけども史実を基にした小説なので、実際にはなかった場面・会話・登場人物などもある。ドイツ留学後のサルバルサン「戦」記と生い立ちからの「前」記が交互にでてくる。ドイツで会った女性の話がどこまで事実か気になる。2015/04/15
mochizo
4
基本は秦佐八郎さんの自伝なのですが、所々今の日本を憂いている表現を当時じゃ考えられない表現で描いています。例えば、実際にはない秦佐八郎さんと、石川啄木との会話とか。雰囲気的には「風立ちぬ」ですかね。日本が頑張って欧米に追いついたのはいいけど、その後どこに舵を切ればいいの?という感じがよくわかります。科学者という立場ではなく、明治時代の本当の指導者が感じた物語として読んでみてはいかがでしょうか。2015/05/04
無謀庵@Reader
3
実は佐藤健太郎と勘違いして買ってアレっと思い、読み始めたら小説でさらにアレっと。正直にいって、伝記小説としてはフィクション部分が雑すぎて、読み物としては出来の悪さが目につき、史実を知るための伝記としては史実がどこまでかわかりにくい上に情報量が目減りしてる感じか。もっと思い切ったフィクションか、もっとリアルに沿った伝記に振るべきだったように思える。2015/04/08