内容説明
ときに軽妙に、ときに痛烈に、人々があたりまえのように信じている価値観を問う。単純な思考安っぽい感情を打ち砕く怜悧な知性。人間、社会、世相について縦横無尽に語った傑作。
目次
ホモ・サピエンスは反逆する
愛の神話
人間についての覚え書き(代理本能論;悲しき天性―攻撃衝動;動物における記号行動;虫がついてこそ本物のリンゴだ;赤ん坊の角度;花鳥;飛行機が虫けらに学ぶもの;スタインベックの「生物学」;地球の安全;人類は滅びるか)
チョウ―その世界(シデムシからチョウへ;アゲハチョウ―サナギの保護色のしくみ;チョウという昆虫;そよ風がないときチョウは死ぬ)
さかだちをしてはならない(さかだちをしてはならない;「博物学」的な思考;いわゆる「基礎」;人間の生物額の示唆するもの;フランスの動物学;大学は何をするところか)
生態学をめぐって
著者等紹介
日高敏隆[ヒダカトシタカ]
1930年東京生まれ。東京大学理学部動物学科卒業。東京農工大学農学部教授、京都大学理学部教授、同理学部長、滋賀県立大学初代学長、大学共同利用機関法人人間文化研究機構総合地球環境学研究所初代所長を歴任。1982年、日本動物行動学会設立、長く会長を務める。著書、訳書多数。京都大学名誉教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ミッチ
8
19世紀末、工業発展で石炭の排出量の高まりで炭酸ガスが増え人間は呼吸困難により滅びる。それに対してロシアの植物学者は植物の炭酸同化で炭酸ガスを吸収して酸素を吐き出してくれると言った。しかし既に排気ガスとスモッグで植物が枯れ初めている。生物学者の任務はトキや蛍が居なくならない為にだけでなく、我々自身が居なくならない為に人々の不安を掻き立てる必要がある。SNS,フィンテック等で浮かれ、ゴーンの話題で頭を巡らされている場合か?日高敏隆先生の愁いは深い。2019/01/07
カネコ
6
○ p.138「 人類は滅びるか? という問いに対しては、今のところぼくはイエスかノーかという形では答えられない。結果は人間が人間の「偉さ」とか「優越性」というような考えかたを捨てうるかどうかで、決まってくるのだろう。非常にはっきりしていると思われるのは、その理由がなんであれ、とにかく「人間はやはり動物より偉い」と思っている限り、人間は遠からず他の動物と同じように滅びるであろうということだ。 」2013/03/20
蝎虎
1
人間に対する新鮮な見方を与えてくれる。「愛の神話」「代理本能論」「地球の安全」「人類は滅びるか」「いわゆる「基礎」」など60年代に執筆されたこともあり濃厚である。動物を物質として発展を遂げている分子生物学、生化学に対して、個体が置き去りにされていることを警告する。未だに生命を完全に理解しなにもないところから再構築できていない現状を見ると新たなパラダイムシフトが必要なのであろう。2012/03/19