内容説明
夕暮れの峠の茶屋に、一人の女性が車の故障で助けを求めてきた。親切を装う茶店の夫婦は彼女に猿轡を噛ませ凌辱する。峠で失踪した妻を探し執念の捜査を続ける警視庁刑事の曾我は、一年三か月後、白骨化した妻と対面した。一方、諏訪湖を見渡す峠に、茶店の借り受けを申し出る夫婦があった。店の所有者桐生は、夫婦を性の奴隷として屈従させ、異常な関係を続けるが…人間の業の深淵を描く表題作他、全四篇。
著者等紹介
西村寿行[ニシムラジュコウ]
1930年香川県生まれ
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感想・レビュー
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Ayah Book
7
初読みの作家さん。表題作なかなか良かった。妻を殺された刑事の復讐譚なのだが、炭焼の焼き子と呼ばれる人たちが受ける差別などを絡めてあり、興味深く読めた。「魔性の島」はかなり中2的。他の作品も基本的にエロとバイオレンスなのだが、文体があっさりしていて読みやすく、こういう作風にありがちな「男至上主義」的な嫌な感じはしなかった。2018/06/25
コールドパワー
1
初読み作家/なぜこの人の作品を読もうと思ったのか、きっかけがよく思い出せないけど、良くも悪くもものすごく男っぽい作品だった。そして昭和の香りが漂いまくっていた。「二万時間の男」と「怨讐分かちがたし」は毛色が似ていて、どちらも被害者と加害者両者の悲しみというか哀れみが浮き彫りになる。「魔性の島」は、展開にかなりワクワクしたのだけれど、後半というか、オチが私にはどうも理解不能で面白み半減。最後まで楽しめたのは、「滅びる」で、予想外のラストに唖然とした。レイプや暴力描写が多いので、ちょっと読み手を選びそうかな。2019/08/09