出版社内容情報
植物の花、樹皮、実、根等から染液を作り糸を染める植物染料。その自然の恵みの色に惹かれ、妙味な色を求め続ける染織家のユニークなエッセイ集。大佛次郎賞受賞
内容説明
植物の花、樹皮、実、根等から染液を作り糸を染める植物染料。百の植物があれば百の色が生れ、季節や産地、媒染の方法が異なればもっと多くの色が生れる。自然界の恵みの色に惹かれ、望みの色を生みだすためには一生をかけても悔いはないという、染織作家の様様な人や色との出会いを語ったエッセイ集。大仏次郎賞受賞。
目次
色と糸と織と
一色一生
糸の音色を求めて
色と音
かめのぞき
天青の実
織探訪記
住まいと影
今日の造形〈織〉と私
プレ・インカの染織を見て
呉須と藍
ルノアールの言葉
老陶芸家の話
蚕
景色
母との出会い・織機との出会い
兄のこと
私の会った人
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ほりん
44
新年最初の本は染織作家・志村ふくみのエッセイ集。一部再読。以前読んだとき、桜の色を染めるには花びらではなく幹を煮出すということを知り驚いた。植物によっていろいろな染め方があり、季節によって、また触媒によって色が変わる。植物の持っている力を存分に引き出し糸にうつしとるという作業には、自然に対する深い愛を感じる。「絣」にこれほど多くの種類があること、その美しさも驚きだった。今回初めてⅢ部を読み、母や兄のことを知った。筆者の波乱の人生と合わせて、筆者の情熱の源を知ったような気がする。背筋が伸びる読書だった。2016/01/11
浅葱@
23
冒頭、はんの木の樹液の赤色を見に行き樹皮から色を引く姿にひたすらなものを感じてザワザワ震えが上がってきました。そこから広がる世界。植物から色を引き出す。染める。紡ぐ。織る。志村さんの来た道、家族、出会い導いてくれた人たち。これしかない色、これしかない道をひたすらに、只管に求める。命をいただくからこその「一色一生、多色一生」でした。2014/01/01
てんてん(^^)/
11
昭和30年代という時代に女が家庭を捨て、自立できるかどうかもわからない染めや織りの世界に身を投じることが如何に困難なことか、今を生きる私たちにとっては想像を絶するものがある。しかし逆にそんな縛りの中にあるからこそ、その道を真摯に選び取ることが出来、また甘美な自由の味を感じることが出来たのではないかと思う。 ふくみさんの語る一言一言にはそういう真摯な思い、夫や子どもと引替えに得た染めと織りに対する愛情や執着、そして凛とした気概と気品があふれている。 我々が現在謳歌していると思っている (コメントに続く)2010/12/21
Haru
4
染色家志村ふくみさんが、昭和50年代に出された一冊です。古書店で見つけ購入しました。「芸術の厳しさ」をきりりと揺るぎなく見つめる文章。芸術には縁のない私ですが、一生活者として、一度きりの人生をどう生きるのか、鋭く問われているような思いになりました。2017/11/06