出版社内容情報
明治7年、伊豆入間村。村の漁師・達吉は嵐の海から異人を救った。匿えばお咎めを受けると承知しながら、達吉は彼を助けることを決意する。異国と日本がまだ分断された時代、心触れ合わせた人々の清廉な姿。〈ニール号沈没〉の史実から紡がれた渾身の歴史小説。
内容説明
“ニール号沈没”の悲劇の中で生まれた、国を超えた確かな友情―明治7年、南伊豆入間村。朴訥な漁師・達吉は命をかけて異人を助ける。それが村を揺るがすことになろうとも…著者渾身の歴史小説。
著者等紹介
鳴神響一[ナルカミキョウイチ]
1962年東京都生まれ。2014年『私が愛したサムライの娘』で、第6回角川春樹小説賞を受賞してデビュー。さらに、同作で2015年に第3回野村胡堂文学賞を受賞した(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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パトラッシュ
51
明治初期の海難事故をきっかけに伊豆の小漁村で様々な人間模様が展開し、運命を大きく変えていく。友情と恋愛と歴史が絡み、漁民から大名家の元家老に元勲まで関わって歴史を織り上げていくドラマは読みやすく面白い。遭難した英仏人の過去などはいくらでも材料になるのに「これで終わりか」と思えるが、漁師とは違う生き方を望んでいた達吉が世界の海へ乗り出していく長い物語のプロローグという感じだ。あと漁村が舞台ながら漁の姿はまったく描かれず、亮子とトムの関係も偶然の出会いが過ぎて女っ気のない物語を盛り上げるために見えたのは残念。2021/04/14
サケ太
23
爽やかさと誠実さを感じさせる物語。偶然の海難事故。当事者たちは当然事態を把握できない。その中で命を救うために懸命に動くさまが素敵。明治となり、元幕臣や会津の重臣らが漁民とともに事件に関わっているという不思議。女性のアメリカ留学など、知らない情報もあり、興味深く読めた。それぞれが、忠義や自己犠牲、誠実さを見せてくれる。突然の邂逅、別れ、新たな旅路。世界の変化や拡がりが、ポジティブなものに感じさせてくれる。2021/03/23
kanki
8
困っている人がいれば助ける。助けたのなら最後まで責任を持つ。人情が熱い。2021/04/27
GOTI
4
☆★「風巻(しまき)」とは海上で吹く暴風のこと。明治7年伊豆沖でのフランス商船ニール号海難事故を扱った歴史小説です。実在の人物が多数出てきます。史実では救助されたのは4人ですが、本作では5人目が登場、フィクションだと思います。伊豆入間村の漁師が嵐の海から5人目の異人を救う。彼は匿うことを懇願。通訳を呼び訳を尋ねると遺産相続で身内に命を狙われてイギリスからアメリカ、香港そして知人を頼って日本へ逃げてきたとのこと。異人の密入国を助ければ大罪!さて?2021/05/18
K.C.
3
たぶん書評買い。ある意味ノンフィクションなんだろう。後日譚があるのも夢がある。ただ、前半のハラハラする展開と比較して、後半はちょっと安っぽく感じてしまったのは、毒されているのかも。鎖国が解けて、外国人と接点がない人との交流って、こんなものなんだろうなと。日本のプロスポーツチームに外国人選手が初めて入ってくるとこうなのかなとも。2022/05/08