想像力の文学
下りの船

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  • サイズ B6判/ページ数 225p/高さ 20cm
  • 商品コード 9784152090508
  • NDC分類 913.6
  • Cコード C0093

内容説明

地球発の船は、その惑星に到着した。その星では船がゆるやかに川を下り、すべての岸には悲劇と喜劇が溢れていた。消毒液の臭いのせいでとまらない涙、ため息を吐くのはモラモラの群れ、一つの部屋に四つの家族、即決裁判と労働監獄、舌を青くした市長、石炭屑の少女、強制労働の少年。男がいた。女がいた。子供がいた。老人がいた。船は今日も黒い川を下り、明日も下り続ける。その先にあるのは…。

著者等紹介

佐藤哲也[サトウテツヤ]
1960年静岡県生まれ。成城大学法学部卒。1993年『イラハイ』で第5回日本ファンタジーノベル大賞を受賞してデビュー。2002年に「ハヤカワSFシリーズJコレクション」より、『妻の帝国』を発表し、同書は日本SF大賞候補に選ばれた(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

ネムル

8
冷徹で暴力的な世界の実相を鳥瞰的に淡々と描いた作品。長く詠われ続けた叙事詩のような言葉のリズムが魅力的で、これが優れた作品だと思う一方で、いまこの世界に素直に浸れる余裕もないなと思ってしまった。2023/11/18

mejiro

6
地球からある惑星に人々が送られる。背景や理由の説明はなく、強制収容所を連想させる描写で不安になる。着いた先は新天地とはほど遠い世界。貧困、重労働、戦争、不正がはびこる地で、移民たちは過酷な生活を送る。コントロールされた簡潔な文章。無情さや無力感で心が波立った。表紙が印象的。2014/11/29

hika

6
植民地、移民、紛争、現代世界の写し絵として、不条理の作品化として読むことは可能だし一定当てはまるのだろうけど、それが全てではないような作品。コピペとしか思えないフレーズの繰り返し、文字数をそろえた会話、様々に動き回る視点。それらが生み出す読者の小説世界に対する「居心地の悪さ」が作品の世界の居場所のなさと重なる瞬間の感覚が本作の「小説」としての最高の楽しさではないだろうか。2009/10/17

ちょろいも

5
わけもわからず巻き込まれた状況で地べたを這いずり回る人間に鳥瞰の視点などない、んだよね。2009/09/03

阿蘇久住

4
仮想世界を舞台に描かれているのは、人間であり、その営みであり、原罪であり、事象であり、それら総ての風景であり。経験も知識も結実しない世界の輪廻が、乾いた文体によって妙な現実味を帯びる。物語を追わずに事象をひたすら淡々と積み上げていく表現が実験的で、読むという行為を楽しめた。2013/02/10

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