エリザベス・コステロ

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  • サイズ B6判/ページ数 222p/高さ 20cm
  • 商品コード 9784152086211
  • NDC分類 933
  • Cコード C0097

内容説明

文学の本質を探求する作家の業を描き、欧米の読書界騒然、ノーベル賞作家の問題作。オーストラリア生まれのエリザベス・コステロは、『ユリシーズ』に着想を得た『エクルズ通りの家』で世界的に知られる作家だ。六十も半ばを過ぎてなお、彼女は先鋭的な発言をし、行く先々で物議を醸す。ある文学賞授賞式のためにはるばる渡米したときは、スピーチやインタビューで棘のある言葉を吐き、付き添い役の息子とも意見を闘わせる。また文学講師を務める世界周遊の船では、旧知の作家と再会しても、彼の作家としての姿勢、文学論に異論を唱えてしまう。人道活動家の姉ブランチが住むアフリカでは神と文学まで話が及び、さらに神話やエロスについて考察を深める。文学シンポジウムに出向けば、批判的に取り上げようとした作家本人が出席することが判明し、角を立てまいとスピーチを書き直すべく徹夜するはめに…。『恥辱』で二度目のブッカー賞を受賞した著者が、架空の作家エリザベス・コステロを通して小説とは何か、作家とは人間とは何かを問う、審判の書。

著者等紹介

クッツェー,J.M.[クッツェー,J.M.][Coetzee,J.M.]
1940年、南アフリカのケープタウン生まれ。コンピュータ・サイエンスや言語学を南アフリカとアメリカで学ぶ。1974年、『ダスクランド』で長篇デビュー。In the Heart of the Country(1977)とWaiting for the Barbarians(1980)で、南アフリカで最も権威あるCNA賞を受賞。1983年に発表した『マイケル・K』で、英国のブッカー賞、フランスのフェミナ賞を受賞するなど世界中で高く評価される。1999年発表の『恥辱』で、史上初の二度目のブッカー賞を受賞。2003年にはノーベル文学賞を受賞した。2002年よりアデレード大学の客員研究員となり、オーストラリアに住む

鴻巣友季子[コウノスユキコ]
お茶の水女子大学大学院修士課程英文学専攻、英米文学翻訳家
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

ミカママ

286
【原書】クッツェーが創作上の女流作家、エリザベス・コステロを借りて、自身のオピニオンを語る作品集。コステロ(これもまた意味深な名前)が世界中を旅しながら、8つのレッスンを読者に残して行く。「食肉産業は、ホロコーストとなんら変わりない」に衝撃を受ける。その意見に寄り添うことはやぶさかではないが、わたし自身は実行には至っていない。クッツェー、読めば読むほど惹かれる作家ではある。実際に読んだのは:https://bookmeter.com/books/35008232018/08/18

ケイ

135
初老の女性作家コステロの代表作は『ユリシーズ』の登場人物ブルーノの妻を主人公としたもの。それが陳腐にならずに世界的作家となったために、様々な国で賞を授与され、その記念講演するも、奇天烈な語リのために彼女の講演に付き添う息子は頭を悩ませる。このあたりは『動物のいのち』でも書かれているが、何をスピーチで話すかを決めるのは作家であり、聴衆にどう受け入れられるのか、更には他の有名作家にどう取られるか、彼らの批評をどう行うかという視点は、作家ならではの気になり方なのか、もしくはクッツェー流の文壇への皮肉か。(続く)2018/08/16

かふ

24
架空のオーストラリア出身の女性作家エリザベス・コステロという人物を設定して、文学賞受賞スピーチや講演、クリスチャンの姉との対話など、文学論的メタフィクション。大江健三郎の晩年の仕事につながるところがある。ジョイス『ユリシーズ』の妻を描いた小説で注目を浴びるというのがメタ小説だった。サイードのオリエンタリズムやフェミニズムに言及したり、最初が「リアリズム」というフィクションを描いている。その後に植民地文学、神について、悪について、エロスについてと文学的問いに正面から挑むのだが、最後はカフカの掟の門前だった。2023/09/23

コニコ@共楽

23
『鉄の時代』のあとがきの「よみがえるエリザベス」を読んで、ミセス・カレンのよみがえりを知りたくて手に取ってみる。「これは講義集?小説?エッセイ?」と混乱。小説家エリザベス・コステロは想像上の人物でありながら、スピーチやインタビューを重ねて議論していく。その主張は、クッツェー本人が考えているのか、想像上の人物エリザベスをクッツェーが批判しているのか、判別しにくい。6編のテーマで「アフリカの小説」が興味深かった。英語で書かれた口承文学とレッテルを貼られたアフリカ文学が”通訳文学”であったという指摘が面白い。2022/11/30

ユーカ

23
架空の老婦人作家エリザベス・コステロを使って、クッツェーが6つのテーマについて語る、という趣の小説。各章は独立しているように見えるので問題なさそうだが、3章と4章が未収録だからか全体のうねりが損なわれているように感じた。主人公のご婦人は、空気に流され、弁解し、嫉妬も激しい気分屋。とても人間くさい。だけど一本通った芯、作家根性は絶対に曲がらない。ちょこちょこと世界各地に出向き、熱弁するコステロ女史。彼女の融通の利かない苦々しくも憎めないキャラが、文学的な問いと私たちが生きる現実世界との橋渡しをしてくれる。2018/01/05

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