鳩

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  • サイズ B6判/ページ数 269p/高さ 20X14cm
  • 商品コード 9784152035110
  • NDC分類 913.6
  • Cコード C0093

内容説明

本書は、戦後最高の幻想作家、日影丈吉の最晩年の作品を中心に編んだもの。死後も選挙通知が届くために律儀に投票所に通う大男の話「墓碣市民」、病室の壁のマンガめいた顔が患者たちと交わる「壁の男」、天使性と悪魔性を備えた新米看護婦たちを描く表題作「鳩」などユーモアと恐怖の絶妙の混交を示す最新作7篇。さらに日影文学を知るうえで貴重な資料となるばかりでなく、内容的にもきわめて質の高い未発表の初期短篇「ヨハンの大きな時計」「硝子の章」と日記抄「三冊の日記帳から」を収録した。

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

シガー&シュガー

8
幻想短編と日記。「極限の吸血鬼」は日影丈吉がドラキュラを描くとこうなるのか、と興味深く、ぶつ切りのように見える終わり方もニクイ一遍。しかしより魅力的なのは街や病院を舞台にした短編らのほうで、日常的な描写がいつの間にかするりと怪談に変わっている「あ、はじまったな」と思う瞬間が堪らない作品ばかりです。そしてそれら短編にも日記にも、もう今では観ることが出来ない日本の街や風俗がじっくりと描写されていますが、それが作品世界に暖かな体温を通わせており不思議に哀しい気持ちにさせられる読後がまた心地よいのです。 2016/05/18

九鳥

4
私小説のような味の幻想短編集。坂の多い街並や暗い墓地、Y字路に立つ小さな家、病院、横町、煉瓦通り。日常の路地から一本横に逸れたら、見た目は変わらぬまま異界に入り込んで戻れなくなる感覚。不気味だけど不思議と怖くなくて、軽妙さがおかしくもある。あそこに住むあの人やあそこのあの犬は、生きている物じゃないかもしれない。2010/01/27

hirayama46

3
日影丈吉、翻訳は読んだことがありましたが、小説を読むのははじめてでした。私小説的なのんびりした雰囲気から、とぼけた味わいのある幻想の世界にひょいと移動する、なかなか良い塩梅の小説集でした。枯淡で飄々としているのは作者が晩年の作品群だからかな。なかなか好みの作風だったので、他の本にも手を出してみたいところです。2017/07/03

YO)))

2
スタイリストぶりを堪能.表題作のファンタ☆スティックな結末は,ダンディズムとポエジーの均整の上にこそ成り立つのだろう.硝子から万華鏡,ラムネの瓶,幻灯…,と,魅力的な小道具を介して,幼き日々と懐かしき街へのノスタルジーを,透きとおった幻の如く写し描いた『硝子の章』が余りにも美事.そこはかとなく"物マニアック"な風情は,いかにも澁澤龍彦が好みそうだと感じた.2013/03/09

hgstrm2

1
なにやらいくら読んでも一向に読み進まないような、尋常でない違和感を訝しみつつ読む。たとえば「吉備津の釜」などにみられる滑らかさが微塵もない。日常のすぐ脇に死や異物や侵入者が透けて見えているような得体の知れなさ。死臭。逆に明らかに異様なものが、日常のように描かれるという逆転。重さ、違和感、緊張感。それはまるで夢の中でものすごく恐ろしい目にあっているのに、全く声も出ず足も動かない状態に似ている。つまり、あまりにも優れた幻想文学ということ。未刊「硝子の章」がいちばん印象的。これをノスタルジーというなかれ。2020/11/29

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