内容説明
近未来のイギリス。怪我をした裸のローアは、激しい雨のなかで道端に倒れていた。微生物による汚水処理技術で富を築いた大富豪一家の末娘として生まれた彼女は、誘拐犯を殺して逃げてきたのだ。だが、身代金を払わなかった家族のもとにも、警察にも行けない。ローアは女性ハッカーのスパナーに助けられ、新たな生活をはじめるが…ローアの波瀾に満ちた人生を描いて、SFに新たな息吹きをもたらしたネビュラ賞受賞作。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
GaGa
40
不思議な偶然というものがあるもので、今朝読み終わった作品と同系列なテーマのものをたまたま続けて読んでしまった。こちらは女性目線であったが、どうにも女性作家が書くこういう作品は矛先が特定の親族に向きやすい(男性作家だとまちまち)結構のめり込んで読んだけど読後感は良くも悪くもなかった。そして一番の謎はなぜネヴュラ賞を取れたのだろう。SFとしての評価はどこにあったのかが謎だ。2012/02/26
催涙雨
27
平行して描かれる三つの時間軸がそれぞれ関わりあってひとつに収束していく構成は面白いと思う。ジャングルの階層になぞらえた例え話に象徴するように上層の人間が市井の最下層に落ちてヘプルやエスト家のような人命を軽視する成金の実態を知っていく本筋も王道ながら読ませるものがある。ただ作者がレズビアンであるというところ以外に登場人物がことごとくレズビアンである意図を感じることができなかった。同性愛に関係する偏見や差別が存在しない世界なのかもしれないがそれを匂わせる描写もなく、主人公がそれに目覚めた理由もよくわからない。2018/02/12
サイバーパンツ
17
SF味は少ないが、サスペンスミステリーを主軸に、サイバーパンク、下水街、など様々な要素を時系列シャッフルも使いつつ、上手くまとめあげており、エンタメとしてはかなり面白いし、フェミニズム文学としても考える所がある。また、これも作者のフェミニスト的な考えによるものなのだろうが、百合小説としても素晴らしい。特に、孤独で愛や自分を知らないローアとスパナーがお互いの中にそれを少しずつ見つけていって、徐々に自覚していきながらも、お互いの埋められない違いを憎み・悲しみ、やり場のない感情をぶつけ合うってのが最高だった。2016/04/19
46neko
4
SFと言うよりミステリー。誘拐された理由や家族の謎にグイグイ引っ張られて最後まで面白かった。処理場の描写はあまりにも現実味があってか、近未来感が持てなかった。でもそれってすごい。笑2018/03/29
Ai
2
主人公・ローアは、下水処理のバイオテクノロジーで億万長者になった一家の末娘。きれいな水とモノに囲まれて育った少女時代と、身分を隠し、下水処理現場で文字通りクソまみれになって働く現在の対比がおもしろい。ローアの同性愛的な人間関係も絡ませながら、彼女が本当の意味で自立していく姿がたのもしい。2017/07/07




