出版社内容情報
多数が少数を認める寛容性や、個人の理性を超えた伝統・良識を重んじる真の保守思想こそが、大衆社会における民主主義の劣化を防ぐ処方箋となる――。利己的な「大衆社会」の暗部をあぶりだし、文明を維持することの大切さを説いた、いまこそ読まれるべき一冊。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
れみ
82
NHK-Eテレの「100分de名著」のテキスト。放送日までに予習のために1回分ずつ読む形で読み進めた。保守に対してリベラルみたいな概念とか、日頃違和感や疑問を感じることの多かった、保守・リベラル・革新という言葉で表される立ち位置や考え方について自分のなかで腑に落ちる部分があったし、読んで良かった。だけど、それで全部を理解した気になったりしないように、自分の考えが100%正しいと思ってしまわないように、自分と相容れない考えも全否定からはいらないように…と、思うのは簡単だけど実践し続けるのはなかなか難しい。2019/02/27
(haro-n)
80
なんだかモヤモヤする。オルテガの著書を読んでいない私が言うのも何だが、この著者が、自分の体験に引き付けすぎてオルテガの思想を語っているのではないか、という懐疑が生じた。「私」とは「私と私の環境」によって形成されるとするオルテガの考えを引用する割りには、当時の歴史的背景やオルテガ自身の体験の具体的な説明が少ないままに、彼の思想を著者自身の体験と結びつけて語っているので、納得がいかない。突っ込みたいところも幾つかあるが、先ずはオルテガの著書を読んだ方が良い気がする。↓2019/02/19
おさむ
48
100分de名著は、ときに全く知らなかった名著を、有能な有識者が紹介してくれるのでチェックしている。本著で紹介される「大衆の反逆」は初見でしたが、いまのポピュリズムが蔓延する世界を分析する上で格好のテキストでした。保守イコール反リベラルではないこと。国家よりも自発的な中間的な共同体が重要であること。戦後の日本は民主主義を優先して立憲主義を脇に押しやってきたこと。人間は不完全であることを自覚して考えの違いを受け入れて合意形成を目指すのが、真のデモクラシーであること。何度も読み返したい良テキストです。2019/02/27
ひろし
47
一年ほど前に大衆の反逆を読んだのだが、字面を追うのが精一杯でオルテガの主張が全然理解できていなかったことがよくわかった。また、中島岳志さんの、亡くなった西部邁さんへの強い思いを感じました。2019/03/10
樋口佳之
41
保守主義者の面目躍如という内容でした。歴史の経験知、死者のまなざしを忘れない永遠の微調整。/死者の思いを取捨選択して利用しようとするのは寛容な態度では無く、同列には置きませんが靖国派と連なるよ。「こんな思いはもうたくさん、オレの代で終わってくれ」「自分の無念を子々孫々まで伝えてくれ」みたいなご先祖様の歴史に刻まない声は聞こえないのでしょうか。微調整が必要な時も断絶と飛躍が必要な時もあったのが歴史でしょう。2019/02/25