内容説明
ガラスの靴はなぜ小さい?継母が意地悪なのはどうして?魔女の正体は?「怖い絵」の著者が案内する、物語のもうひとつの味わい方。
目次
第1講 誰もが知っている物語―ペロー&ディズニー版「シンデレラ」(太陽王の時代;宮廷詩人の翻案 ほか)
第2講 誰も知らない物語―グリム版「シンデレラ」(グリム童話集の功績;継母はどうして意地悪か ほか)
第3講 昔話とファンタジー(昔話のはじまり;歳月と移動が物語を育む ほか)
第4講 物語は終わらない(授業を終えての生徒たちの感想;ディズニーの影響力 ほか)
著者等紹介
中野京子[ナカノキョウコ]
北海道生まれ。作家・ドイツ文学者。2007年に『怖い絵』で、新たな絵画の見方を提言して注目される。専門はドイツ文学、西洋文化史(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
アキ
98
ドイツ文学者だけにグリム童話における「シンデレラ」の解説が詳しい。よく知られたディズニーの物語では、ガラスの靴の説明がないが、フランス版ペローによるシンデレラでは靴だけが仙女のプレゼントであることや、靴は特権階級の占有物であり、誰も履けない程小さいのは、最古版が9世紀中国であり、纏足の可能性も考えられるという。今まで700もの昔話が類話として数えられ、昔話の奥深さを垣間見た。子どもからみれば、継母も実の母も躾をされるのを意地悪と考えてしまう。また灰とは死、再生、贖罪、魔術を象徴し、豆は死者の魂を意味した。2022/04/11
へくとぱすかる
66
恥ずかしいことに、「シンデレラ」が個人名でないことも、初耳でした。私たちがよく知っているつもりのシンデレラも、読み解いてみると、時代による変遷があり、逆に時代を読み解くカギになるようだ。魔法の出てこないヴァージョンもあるという。物語の起源はまだ確定していないらしいが、9世紀の中国までさかのぼれるとは意外。物語に対する現代の批判は、シンデレラの、他人に助けてもらうばかりの姿勢にあるらしいが、著者はある程度は大目に見たいという。確かにいじめられている立場の人間に、自助努力を第一に求めるのは酷な話だ。2021/01/28
☆よいこ
65
3つのシンデレラ物語の違いと変化を時代背景などを見て読み解いて比べていく。[ペロー版]仙女、かぼちゃの馬車、ガラスの靴、12時のタイムリミットなど魅力的なアイテムが多い[グリム版]シンデレラも王子も行動的、シンデレラに知恵と勇気がある[ディズニー版]音楽、キャラクターの魅力大。夢を見たい子供向け、ヒロイン性。▽イタリア版オペラ『チェレネントラ』も面白い。その他、関連映画やミュージカル、絵本の紹介あり。▽図書館版はハードカバーふりがな親切で読みやすい。2017年7月に筑波大学付属中学で行われた授業を書籍化。2019/11/20
みなみ
22
誰もが知っているシンデレラについて、グリム版とペロー版、ディズニー版のそれぞれの特徴、違いについて初めて知ることも多く、新鮮だった。昔話は上辺のストーリーを読むだけでも面白いけれど、多面的な分析ができるのも良いところ。ペロー版の無力で辛抱しかしないシンデレラよりも、グリム版の方が、賢さとたくましさによって未来を切り開くシンデレラの方が格好よくて素敵だなぁ。当時の女性像や男性優位の考え方が色濃く反映されていることがよく分かる。2022/09/25
おはなし会 芽ぶっく
16
ペロー、グリム、ディズニーのそれぞれのシンデレラを比較。絵本での比較はしたことがあったけれど、オペラやミュージカルなど色々と表現されているのだと知りました。以前、子ども達はディズニーのシンデレラしか知らないので、グリムのシンデレラの話をした時は驚いていました。この本を読んで、もしかしたら、中国の纏足からひろまっていったのかも?という説には驚きましたけれど。2020/01/23