内容説明
一八九五年、下関における日清講和条約の調印。清朝打倒を決意した孫文は、同志とともに広州で最初の武装蜂起を企てる…。「大同社会」の実現を目指して、世界を翔る若き革命家の軌跡。膨大な資料から真実を読み取り、最後まであきらめなかった姿勢と無私の精神にあふれた孫文の実像が甦る歴史小説の神髄。『青山一髪』を改題、待望の文庫化。
著者等紹介
陳舜臣[チンシュンシン]
1924(大正13)年、神戸に生まれる。大阪外語大学印度語部卒業。同校西南亜細亜語研究所助手を勤めるが終戦によって辞職し、家業の貿易に従事。1961年、『枯草の根』により江戸川乱歩賞を受賞し作家生活に入る。69年、『青玉獅子香炉』により直木賞、70年、『玉嶺よふたたび』『孔雀の道』により日本推理作家協会賞、71年、『実録アヘン戦争』により毎日出版文化賞、76年、『敦煌の旅』により大佛次郎賞、89年、『茶事遍路』により読売文学賞(随筆・紀行賞)、92年、『諸葛孔明』により吉川英治文学賞、93年、朝日賞、さらに95年、「作家としての業績」により日本芸術院賞をそれぞれ受賞する。日本芸術院会員(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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優希
45
中国革命の父と言われる孫文の伝記になります。無私の精神にあふれた実像を見ることができそうでした。難解さもありますが、興味深いです。下巻も読みます。2022/09/24
James Hayashi
22
辛亥革命を起こし中国革命の父や国父と呼ばれる孫文。日清戦争後からストーリーが始まるが、それ以前の歴史的背景や政治状況が語られないので、読みやすさはあるが孫文を歴史的に評価するのが難しい(今のところ). あまり食指は進まないが下巻へ。2016/08/19
うたまる
1
辛亥革命を成し中華民国を建国した孫文の伝記。上巻は重陽蜂起の失敗から英米での集会活動が中心。意外にも終始穏やかな筆致で、革命家の悲壮感や切迫感はあまり感じられない。例外は同志陸皓東の死に様で「請う、速やかに刑を行え」は無惨にして苛烈。捲土重来を期す孫文にも滾るものはあったかもしれないが、こういうキャラだと思い読み進める。さて上巻で最も興味を惹かれたのは、日本が”漢籍の宝庫”だったという事実。易姓革命の中国では焚書が度々起こるため貴重な書物が失われることが多い。そんな稀少本を日本が保存していて驚くらしい。2015/12/22
よし
1
陳舜臣の作品はとても読みやすく、引きこまれる。陳少伯や鄭士良、陸晧東など、孫文だけでなく、その同志たちも生き生きと描かれている。2014/01/29
rebanira_itame_man
1
1895年10月25日の広州での最初の武装蜂起を起こす少し前から物語が始まる。広州の武装蜂起は内部からの情報漏洩で失敗に終わり、孫文の長い海外活動が始まる。香港を脱し、横浜、神戸、ハワイ、アメリカでの活動を経て、イギリスに至る。イギリスでは、清朝公使館員に拉致され、清に移送・処刑されそうなる。 上巻での見所は、孫文拉致のための清国側の作戦と孫文がこの危機をどう脱したか、そして、この拉致事件が辛亥革命に与えた影響。 その後、大英博物館で南方熊楠と意気投合するエピソードも興味深い。2011/12/06