内容説明
秦の始皇帝の父ともいわれる呂不韋。一商人から宰相にまでのぼりつめたその波瀾の生涯を描く。商賈の道を捨て、荘襄王とともに、理想の政体の実現に向けて、秦の政治改革に奔走する呂不韋だが…。宮城谷文学の精髄・全五巻完結。
著者等紹介
宮城谷昌光[ミヤギタニマサミツ]
昭和20年(1945年)、愛知県蒲郡市に生まれる。早稲田大学文学部卒。出版社勤務のかたわら立原正秋に師事し、創作を始める。その後帰郷、執筆活動に取り組む。『王家の風日』を完成後、平成3年『天空の舟』で新田次郎文学賞、『夏姫春秋』で直木賞を、同5年『重耳』で芸術選奨文部大臣賞、同12年には第三回司馬遼太郎賞受賞、同13年『子産』で吉川英治文学賞を受賞
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感想・レビュー
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遥かなる想い
211
呂不韋の物語の最終巻。臭雄のイメージが 強かった呂不韋が爽やかに描かれる。 子楚の擁立から文信候に..後の荘襄王と 共に秦の政治改革を進める.. 長信候と太后との淫靡な風景はさりげなく 流し、終始 宮城谷昌光ワールドの 呂不韋物語だった。2017/02/03
KAZOO
71
最期は秦王政の宰相となるもののあまり関係がよくなく、その後内乱が生じたりします。宮城谷さんの呂不韋は結構善人ぽく書かれていますが、呂氏春秋を編纂させたことからきているのでしょうね。また最小の地位を降りてから地方行脚の旅に出て過去にあった人々に会いに行ったりします。一つの見方なのであえて反論を唱えませんが、もうすこし悪の要素を入れて書かれたほうが私にはイメージ的に面白いのではないかと思われました。それでもこの全5巻は楽しめました。2015/06/08
future4227
52
ついに最終巻。「人の差とは、やるかやらないかの差にすぎぬ」という荀子の思想を政治へ反映させていく呂不韋。人材登用、外交、内政、軍事とあらゆる分野において非凡な才能を発揮する。人材登用においては閑職にあった蒙驁将軍を大抜擢し、白起を凌ぐ勝利を重ねていく。紀元前において既に民主主義国家をイメージしていた革新的な人。そして情愛に満ちた人物。多くの人が彼に救われ、大勢の人が彼を慕っていく。願わくばもう少し秦で活躍して理想国家を作ってほしかった。それにしても宮城谷さんの始皇帝評はボロクソ。本当に呂不韋の子?2021/08/24
sakap1173
35
5巻はダイナミックな国家運営の物語。秦が中華を統一したのは始皇帝だが、その礎をつくったのは呂不韋なんですね。 最期はちょぴっと切なかったけれど、全巻とおして爽やかな小説でした。 感動しました!!2021/03/12
mm
23
長い長い戦国時代を経て、始皇帝が中国を統一。年表に書いてあるのは一行だ。しかし、そこにそこに至る過程はこみ入り極。神が書いたシナリオだとしたら、ホントに神様は他に類を見ないライターだよ。。その壮大な流れの中では、私欲に駆られず、己の道を求めた呂不韋もほんの一部だろう。彼は、1日に千里を駆ける駿馬でなくとも良い。1日に一里を駆けても万日走り続ければ万里を進むことができる、という努力を尊ぶ。宮城谷さんも、誠に真摯に古典を読まれているようで、姿勢が重なって見えます。運には盛枯があるが徳にはない。徳を貯め。はい。2021/03/13