内容説明
単行本未収録の厳選された15篇をここに集成。統帥権独立の起源から大量餓死を特徴とする日本人戦没者像まで、実証の精緻さが光る佳作ぞろいである。
目次
統帥権独立の起源
日清戦争における対東学軍事行動
閔妃殺害事件の全貌
再考・旅順二〇三高地攻め論争
満州領有の思想的源流
張作霖爆殺事件の再検討
「百人斬り」事件の虚と実
第二次大戦における日米の戦争指導―戦争終末構想の検討
ミッドウェー海戦の再考
太平洋戦争末期における日本陸軍の対米戦法―水際か持久か
ベトナム二百万人餓死説の実態と責任
第二次世界大戦の日本人戦没者像―餓死・海没死をめぐって
軍用動物たちの戦争史
第二次大戦期の配属将校制度
旧日本軍の兵食―コメはパンに敗れた?
著者等紹介
秦郁彦[ハタイクヒコ]
1932年、山口県に生まれる。東京大学法学部卒業。ハーバード大学、コロンビア大学への留学を経て、防衛研究所教官、大蔵省財政史室長、プリンストン大学客員教授、拓殖大学、千葉大学、日本大学教授などを歴任。法学博士。93年菊池寛賞受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
金吾
18
小論文集であり大変興味深い内容でした。著者独特のアプローチは参考になります。閔妃、張作霖、百人斬り、軍用動物の話が良かったです。2022/02/21
ゲオルギオ・ハーン
10
15篇の論文が全て興味深く、統計などの当時の資料で検証すると通説とは異なることが多く、勉強になった。読んでいくと日本軍は太平洋戦争での終戦戦略を当初から考えていたり、兵站も重要視していたが、実施段階で支離滅裂になる点が目立った。兵站は補給線を攻撃されたせいもあるけど米に拘り、補給物資の種類が多すぎた。戦争の進め方も真珠湾の成功と序盤の連勝に気を良くして予定よりも戦線を広くしすぎるなど設定している戦略を軽視しているような印象があった。他にも興味深い検証が多いので日本近代史好きの方におすすめしたいです。2020/05/16
CTC
6
朝日慰安婦報道でも勇名を馳せた秦郁彦さんの、直近10年の学術誌発表論文15篇の集成。580頁二段組で特濃な内容ゆえ、本体3200円もコスパは最高と断言できる。氏はあとがきで自身の著述姿勢を記している。論語の金言を引いて「述べて作らず」を理想とし(多くの学者先生やブン屋さんは「作ってる」自覚もないんだろう)、「宮大工の職人根性」で60年著述をしてきたと。本書には統帥権や203高地のようなお馴染みの題材もあるが、広義の餓死者数や海没者数を推計してみたり、軍用動物や配属将校制度を考察したりと縦横無尽の感。2014/11/06
Takeshi Kubo
5
本書は、論文集ですが、いずれの論文も著者独特のアプローチの仕方が取られているのがよくわかります。15ある論文のうち、特に興味深かったのは、旧日本陸海軍の食糧事情を、米食とパン食の観点から分析した「旧日本軍の兵食ーコメはパンに敗れた?」です(笑)2015/02/19
竜王五代の人
4
同じ著者の「昭和史の謎を追う」と同様、歴史家らしく豊富な資料を整理整頓して見通しよくしてくれる本。興味深く読んだのは、統帥権・配属将校・陸海軍でのパン食の節。統帥権は諸外国にモデルはあっても、実態は山県有朋が権力把握のためにだまし取ったもの。パン食は、著者は軽量を強調するけど、支給する重量はコメとパンで大差ないと添付資料にあるからよく分からない。炊飯不要で燃料・水含め総合的に軽いとするなら分かる。2023/05/16
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