内容説明
地上に在ることの歓びに包まれて、甘美な音楽でも聴くように、心おどる物語でも読むように、パリという都会を味わう。永遠なる時を求めて魂の冒険を綴る手記。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
角
1
辻邦生の1980-1981年のパリ滞在日記、最終巻。受け身ではなく、働きかける者、語りかける者としてフランスに生活したいという著者の衝動が、この一年間の働く者としての滞在に結実した。本書中で著者がフランスをどう捉え、どう考えていたかは、著者の主観でしかない。そもそも日記体で書かれレポートでもエッセイでもない以上、著者の目指したのも「主観」と思われる。その底流に流れる、社会と自分と時間を総体的に捉えようとする意志、それこそが読み取られるべき何かだと思われる。このとき著者は55歳、その若さと強靱さよ。2019/11/24