内容説明
本書は、著者の自伝的要素の濃い短篇連作小説「場所」と、著者が出離以来、いつかは書く、と胸に温めていた釈迦の伝記を、書き下ろしとして完成させた新作長篇小説「釈迦」とを収録。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
おおにし
13
【場所】生まれ育った徳島から始まり、涼太と暮らすために夫の元から出奔した先京都の下宿先、離婚が成立して上京してから移り住んだ場所を巡り、当時のことを振り返るルポ小説。『夏の終り』などの私小説では描かれていない細部の話が興味深い。夫の元から着の身着のまま京都へ向かった背景には夫のDVがあったことに驚き、捨てたわが子の哭き声の幻聴に堪らず途中の名古屋駅で引き返したというエピソードが胸を打つ。作家で成功するも男性関係に翻弄され、2回自殺未遂して最後は出家を決意するところまで赤裸々に語られていて読み応えがあった。2022/03/18