内容説明
編成はジャンル別にせずに安部公房の創造の軌跡が明らかになるよう編年体にした。未発表作品をはじめ安部公房のすべての著作を収録した。対談、座談会、インタビュー記事を合わせると小説とほぼ同じ量となるためページ数の関係から公房の発言が少ないものは収録を見合わせた。
目次
箱男(小説)
著者のことば―『箱男』(エッセイ)
書斎にたずねて(談話記事)
再び肉体表現における、ニュートラルなものの持つ意味について。―周辺飛行18(エッセイ)
周辺飛行―第76回新潮社文化講演会(講演)
『箱男』を完成した安部公房氏(談話記事)
大脳組織と反復―桐朋学園金曜講座(講義)
前回の最後にかかげておいた応用問題―周辺飛行19(エッセイ)
芝居に打ち込む安部公房(談話記事)
愛の眼鏡は色ガラス(三十二景)(戯曲)
ドナルド・キーン宛書簡第13信(書簡)〔ほか〕
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
roughfractus02
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システム/劇団安部スタジオを立ち上げる彼は、独自のシステムで俳優を訓練し、オリジナル脚本を上演し、観客の帰属意識を変える活動に集中する。物語への帰属を徹底批判する『箱男』では「ノート」形式で無名の者の記入の可能性が示され、挿入された無関係な写真が全体の断片性を示唆する。読むことと見ることの間に立つ読者は、物語への同化の前に書物への同期に戸惑う。ドナルド・キーンとの対談『反劇的人間』で一番の事件である地球崩壊の情報は伝わらないという逆説を述べる彼は、東京を全焼させようとする「愛の眼鏡は色ガラス」を上演する。2017/02/19