出版社内容情報
空海の書の奇怪な表現が意味するものは? 「白氏詩巻」はなぜ日本文化の精髄なのか? 俊成が書にもたらした革命とは? 一読でわかる日本の書の歴史。
内容説明
鑿で刻る書に始まる三千五百年の厚みをもつ中国の歴史に楷行書の時代になってから途中乗車し、いち早く近代化することによって、中国書史から途中下車したのが、日本書史である―三筆、三蹟、俊成、一休、良寛、さらには明治の元勲まで。古代から近代にいたる日本書史のダイナミックな流れを一望に収める。思索する書家がやさしく語る日本書史の入門編。
目次
第1章 書史への途中乗車―中国時代の書
第2章 漢字の中核化―擬似中国時代の書
第3章 日本文字の誕生―日本時代の書
第4章 中世の書―大陸禅の亡命と流儀書道
第5章 近世の書―西欧文明との出会い
第6章 書史からの途中下車―世界段階への扉
著者等紹介
石川九楊[イシカワキュウヨウ]
1945年福井生まれ。京都大学法学部卒業。「書は筆蝕の芸術である」ことを解き明かし、書家、評論家として活動。京都精華大学教授。1990年、『書の終焉』でサントリー学芸賞、2002年、『日本書史』で毎日出版文化賞、2009年、『近代書史』で大佛次郎賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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gtn
21
詳しくないのでイメージのみ。空海は才子才に倒れるという感じ。邪悪と言ってもいい。良寛は、著者が絶賛するほどの良さが分からない。圧巻は副島種臣。「積翠堂」の想像外の構図。「帰雲飛雨」は竜巻が襲ってくるよう。とにかく群を抜いている。2023/05/09
umeko
5
図版が豊富で、解りやすい。小学生の頃のつまらないイメージの書道が、歴史という流れを知ることで、これほどまでに覆されるとは思ってもみなかった。これから書を見る眼が変わりそう。2013/10/24
良さん
0
書を「筆触」と捉えるユニークな著者の書史。芭蕉が名を連ね、評価されているのが何よりも興味深い。 【心に残った言葉】日本の書史は、刻るだけの書史に始まる三千五百年の厚みと高さと広がりをもつ中国の書史に楷行草の時代になってから途中乗車したものです。そしてのちには日本が東アジアでいち早く近代化することによって、東アジア書史から途中下車しました。(15頁)2016/10/17
Kenichi Imai
0
自分は悪筆で、ワープロやPCの普及に救われた人間の一人だ。 でも台北の故宮博物館で書の力を感じたり、笑っていいともの書道合戦を見たりするうち、美術的興味は湧いていた。 この本は中国の歴史を踏まえつつ、日本の書の変遷をたどり、その本質をずばり見破っている。 中でも空海の「益田池碑銘」や明治の元勲副島種臣の書には腰を抜かした。 書という芸術の奥行きに圧倒された。 また日本の近代化が西洋化のみではなく中国化でもあったと喝破するなど、書家としての視点からの歴史解釈も新鮮だった。 自分が書道に取り組むことはないだろ2012/06/10