内容説明
「不安」どころではない未曾有の時代は、なぜ到来したのか?私たちは、吸い込まれるように「先の見えない時代」へと移行している。かつて、これほどまでに人間が無力な時代はない。問題の所在はわかっていても、「現代」を支えるシステムが複雑かつ巨大過ぎて、解決手段をもてなくなってしまった。いつから、どのようにして、私たちは「明るい未来」をなくしてしまったのか。気鋭の哲学者が「崩れゆく時代」を看破する。
目次
第1章 「悪」の時代
第2章 経済と諒解
第3章 不安と怯え
第4章 冷たい貨幣か、温かい貨幣か
著者等紹介
内山節[ウチヤマタカシ]
1950年東京生まれ。哲学者。現在、東京と群馬の山村に暮らす(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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kan
7
貧乏の商品化や労働力の部品化を批判し、現代の社会システムは限界であるという主張は明快。短期的な善と長期的な善のギャップから、悪の定義が曖昧になり浮遊する現代というのは、10年前の著作だが今日にも当てはまる。近代の発達原理は今や劣化原理というのにも同意。社会システムの枠組の再構築には連帯が鍵となるという著者の主張は、内田樹氏の言う、互恵的な共同体の再生と通ずるものがあると思った。2021/03/29
まんぼう
3
10年以上前の本だが、今、このタイミングで読んだことに必然を感じる内容。現在の経済の在り方、冷たい貨幣と温かい貨幣があること、資本主義社会の矛盾や、それに気づきながらもこの中で生きていかねばならない苦悩と現実を、見事に言語化してくれている。 その上で何ができるかを考えたとき、やはりローカルの繋がりやコミュニケーションというものがカギになってくるということも、わかる。 世界が危機を迎えている今、私自身も変化したいし、社会の変化も注視したい。2020/04/18
Kanau
2
他のレビューで、この時代を克服するための処方箋が弱いという意見が多々。自分も同じような感想を抱いたのだけど、逆に言えばそれくらい行き詰まった時代なのかもしれない。個人的には最も現実的で効果のある処方箋。そこから始めるしかないよね、という。欲張るならば、過去の想起だけでなく新しいものを上手く使う発想も欲しかった。IoTやクラウドファンディングは良いツールになると思う。いずれにせよ、巨大システムを前にあまりにも無力化してしまった僕たちは、結局のところ足下から小さな変化を繋げていくほかないのだろう。2016/08/15
rigmarole
2
印象度A-。『「里」という思想』と比べて建設的な提案が少なく、近代社会の問題を指摘し分析した部分が大半を占めます。著者の理解が全面的に正しいという保証はないものの、個人的にはためになることが多かったです。瓦解しつつある現代の巨大システムから脱するための視点として、彼は「連帯」=共有された世界における生命の結び合いに眼を向けることを提唱して本書を閉じています。私はこの概念に、仏教の縁起論を連想しました。今の世の中に「漂流する個人」である私たちが絶望から救われる方向性はそんなところにあるのでしょうか。2013/05/01
ゆんじぇ
1
よくない時代に生きているんだろうな、という漠然とした不安の原因を教えられたように思います。でも、このシステムを変えることなんてできずにのっかって生きていくしかないんだろうなあ・・・。2017/02/03