出版社内容情報
前田家は利家とまつ、そしてこの女性によって築かれた。仇の遺児から側室、三代藩主の母に登り詰めた女傑「ちよぼ」を描く長篇小説。
内容説明
前田家の礎は利家とまつ、そして、この側室「ちよぼ」によって築かれた。江戸へ人質として出され能登に五重塔を建立し、月光菩薩のように慕われた女傑の人生の決定的瞬間を描く連作短篇。
著者等紹介
諸田玲子[モロタレイコ]
1954年、静岡県生まれ。1996年、『眩惑』で小説家デビュー。2003年、『其の一日』で吉川英治文学新人賞、2007年、『奸婦にあらず』で新田次郎文学賞、2012年、『四十八人目の忠臣』で歴史時代作家クラブ賞、2018年、『今ひとたびの、和泉式部』で親鸞賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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真理そら
79
諸田作品の中でこういう地味めな女性に光を当てるパターンの作品は好きだ。が、この作品はちよぼ像がピンとこなくて感情移入しにくかった。名護屋で利家と過ごした期間についての短編もほしかったかも。最後の「妙成寺」は大工集団の五重塔他建設のお話なので、この手の物語好きには楽しく読めた。が、ここで純愛エピソードが登場すると本阿弥光悦の話がぼやける気がしてしっくりこない気もした。と好き勝手なことを思う読者なのである。2021/03/05
Willie the Wildcat
72
「天守vs.五重塔」を、「まつvs.千代保」に置換。故の”月光菩薩”でもある。唯一運命に抗う行動が、父子再会。背中を触れた父を、利常が振り返る件に母の想い。静かに振り返る新左衛門との再会の件に、一人の女性としての想いが滲む。建立を自身で依頼したにも関わらず、自身でその五重塔を見ることがなかったのは、人質としての物理的な理由のみならず、上述の抗った運命と抗わなかった運命の両方を体現した気がしてならない。踏まえると、猿千代の命名の由来に込められた先代の想いを聞いたことも、やはり千代保の腹を据えた転機也。2021/06/07
雅
60
前田家の礎を築いた女性。正直、初めて知った存在だけど女性の地位が低い時代にあって周りに翻弄されるだけで終わらなかった生き方は素晴らしい。2020/09/30
はれひめ
45
前田利家と言えば妻まつ。庶子猿千代を前田家三代目当主に就かせた側室千夜保は正直記憶になくて大河ドラマに出てきたかググったら田畑智子だった。正室と側室のバチバチを利家ならスルーしていただろうと妄想。息子可愛さで殿に取り入る千代保は小賢しい女と見られても仕方ない。他の側室は何かにつけまつを立ててていたらしいから、その差でまつに嫌われていたのは納得。時系列が行ったり来たりで千代保の功績をイマイチ読み切れなかった。2021/01/01
kawa
36
加賀百万石初代・前田利家の正妻・まつが「太陽」ならば、側室で前田家三代・利常の生母「ちよぼ」は「月」として加賀の国を守護したそうな。本作はその「ちよぼ」が主人公の連作短編集。「鬼退治」「お猿どの」「おんな戦」どれも読み手を魅了する出来。前田家を通じての徳川の世のスタートの様子が面白くも興味深い。ストーリーの流れとして見ると、登場人物が多すぎたり座布団広がりすぎ感があり少々戸惑うところが惜しいところかな。戦国の世で滅ぼされた浅井・朝倉の血筋の多くが前田家に流れ込んで活躍の場を得ていたことを知ったのは一得。2020/10/29