出版社内容情報
ビルに火を放ったのは俺か? あの「九月十一日」の直前、東京・西新宿で起きた「世界の変貌」を描く表題作ほか、演劇を刺激し続ける著者が拓く、小説の新しい地平。
内容説明
あの夜、歌舞伎町のビルに火を放ったのは自分なのか、それとも?―泥酔した記憶が定かでない中古レコード店主は自問を繰り返す。不穏な日々を彩るように流れるディランの歌声。やがて不審な客が店を訪れ「火をつけろ」とつぶやき姿を消した…。あの「九月十一日」の直前、東京・西新宿を舞台に、変容する世界を描く表題作と、三十一年間借りたままの本を返しにゆく奇妙な一日を写す「返却」。現代演劇を刺激し続ける著者が挑む“小説の冒険”。
著者等紹介
宮沢章夫[ミヤザワアキオ]
1956年静岡県生まれ。劇作家、演出家、作家。「遊園地再生事業団」主宰。1992年上演の戯曲『ヒネミ』で岸田戯曲賞を受賞。『時間のかかる読書』で第21回伊藤整文学賞(評論部門)を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ばんだねいっぺい
19
宮沢さんの本は、だいたい、エッセイのタイトルにもあった「わからなくなってきました」だ。今回も、どこかへ行きそうでどこへも行かない。どこに隠してあったのか、第三集のアナログは。2019/04/28
しゅん
12
「返却」を再読。中年のライターが図書館で借りた本を八王子まで31年ぶりに返しに行くというただそれだけの話だが、この小説に忍び寄る不穏さと孤独がたまらない。京王線の車内、様変わりした八王子の景色、「アメリカの鱒釣り」の記憶、足を引きずっていた偉そうな男の記憶。なんの足しにもならない描写の中に、生きていくことの本質みたいなものが滲み出ている。気がする。たどり着けないまま寄り道を繰り返し、別の何かにたどり着くこと。足元の覚束なさ故の確かさを感じて嬉しくなる。2019/01/29
mawaji
4
週刊ブックレビューで中川五郎氏ご推薦。高校生の頃、予備校の夏期講習を口実に上京して以来、西新宿のレコード(海賊版)屋さんにはことあるごとに入り浸っていて、当時の町並みを思い出しながら読みました。新宿レコードはまだあるようですが、Kinnieとかディスクロードとかはもう無くなっているんだろうなあ。新宿大ガードは確かにこちらの世界とあちらの世界を隔てる分水嶺のような存在。もう一編「返却」で「八王子は日本の西海岸だ」って言っていたのはユーミンなのかな。久しぶりに西新宿へCDショップ巡りに行ってみたくなりました。2011/12/29
林 一歩
3
1999年10月から西新宿のあの界隈に足を踏み入れていない。好きだった中古盤屋やブート専門店は残っているだろうか。2012/03/18
りえぞう
2
△。もっと古い時代の話かと思ったらスーパールーズの火災事件なんか出てくる。同時収録の返却『とも、何がfどう面白いのかわからず。』2020/10/17