内容説明
父は、一高でバンカラを演じ、療養所では悩めるインテリ青年となり、経営者にまで昇りつめた会社では偽悪家・変人・趣味人を気取った。そして晩年、「緩慢なる自殺」を図る。戦争と結核に行く手を阻まれ、それでもなお、自分の可能性を求め続け、最期まで苦闘する父。時代に、運命に、抗い続けたひとりの男を描く長篇小説。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
to boy
9
著者が思い出やら会社の人たちに聞いたりした事を元に父親を語った物語。秀才でありながらきわどくエキセントリックな性格の父を確執を持った息子の目で冷たく描かれています。でも死を迎える頃の描かれ方にはなにか温かみが出てきたようにも感じました。家庭における父親の孤独を強く思いました。2014/05/09
Koki Miyachi
3
小説家が父の人生を記す。誰もが持つ父という大きな存在。亡くなった父の遺品整理から父の人生を辿る作業が始まる。自分の記憶にある父、親戚や父の会社の人達から聞いた生き様。浮かび上がってくる父の人生の出来事、自分の関わり合い、事実を知ることで気付く父の内面。人の人生なんて、死んだら誰も知る事ができない儚いもの。その時の父への想いや尊敬の念、確執もひっくるめてきちんと残す作業は、最も素晴らしい敬意の表し方だ。自分は、10年以上前に亡くなった自分の父親の人生を、殆ど知らないことに気付いて愕然とした。2013/03/22




