感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Willie the Wildcat
43
無理も重なればり理となるような戸惑い、不安。制度、規制に縛られ、時に真理が見えなくなる現代社会。人が、町が、社会が、そして国が1つの”色”に染まる中での主人公の孤立感に、背筋が寒くなる・・・。「掟の門」が問いかける真実の真理。解釈の名の下での錯覚や陶酔、果ては洗脳。(執筆時期等を考慮すると)最期まで己の意思を貫くことで、専制国家の下での弾圧の犠牲となった感。「思考停止」への警鐘と解釈すると共に、その警鐘を活かすことができなかったその後の歴史が 脳裏を交錯。2015/07/19
James Hayashi
24
カフカの死後、友人により発表された作品であるが未完。シュールレアリズムの作品のため、面白さというより不条理な社会を皮肉っている感じもするが、異次元の世界観も持ち、著者の言わんとしていることは理解しがたい。が、シンプルなストーリーに惹きつけられる。何の咎(とが)もなく逮捕され審理されるが、あまりにも理不尽であり、悩む本人と関係者の心理を書き描く。ちょっと訳が堅苦しい。2016/02/27
アーチャー
15
「変身」同様に不条理だが、主人公が迎えた結末は「変身」以上に空しさと残酷さを感じる作品であり、これも間違いなくカフカの傑作である。
勝浩1958
13
冒頭の有名な書き出しに、北朝鮮や中国だけでなく、特定秘密保護法が施行された日本にもこのようなヨーゼフ・Kの身に起こったことが現実となる虞を抱きました。 そして、映画『未来世紀ブラジル』を観たときの強烈な印象が甦ってきました。2016/03/26
あなた
12
カフカの小説って基本的には、社会ってじぶんがどうこうやっても働きかけてもまったくどうにもこうにもならないシステム主義なところがあって、それは実は不条理でもなんでもなくかなり条理的で合理的に機能しているからおまえの主体なんて無価値に等しいんだという構造が多い。ところがそういった権力の中心はからっぽなのがミソ。権力の王座には、じつは誰も坐っていない。オーソン・ウェルズの映画のラストではKは爆死する。2009/07/12