内容説明
まゆみは、歌が大好きな女の子だった。小学校の授業中も歌を口ずさむ娘を、母は決して叱らなかった。だが、担任教師の指導がきっかけで、まゆみは学校に通えなくなってしまう。そのとき母が伝えたことは―表題作のほか、いじめに巻き込まれた少女の孤独な闘いを描く「ワニとハブとひょうたん池で」などを含む著者自身が選んだ重松清入門の一冊。新作「また次の春へ」を特別収録。
著者等紹介
重松清[シゲマツキヨシ]
1963(昭和38)年、岡山県生れ。出版社勤務を経て執筆活動に入る。’91(平成3)年『ビフォア・ラン』でデビュー。’99年『ナイフ』で坪田譲治文学賞を、『エイジ』で山本周五郎賞を受賞。2001年『ビタミンF』で直木賞、また’10年には『十字架』で吉川英治文学賞を受賞する。現代の家族を描くことを大きなテーマとし、話題作を次々に発表している(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
新地学@児童書病発動中
122
自選短篇集なので、傑作が多い。一つ選ぶとしたら、表題作の「まゆみのマーチ」だろうか。歌が好きで、授業中でも歌を歌いだしてしまうまゆみを、深い愛情で包み込む母は忘れがたい。まゆみのような世間からはみ出してしまう子供を救えるのは、母親の本当の愛情なのだろう。まゆみのお母さんのような人は、この世界にたくさんいるに違いない。目立たないけれど、そういう人たちがこの世を支えているのだ。 物語の中で母が歌う「まゆみのマーチ」には無条件の母の愛がこめられている。読んでいて涙が止まらなくなり、困った。2016/06/03
ましゃ
29
いじめや不登校、一歩前に進めない女子を描いた自選短編集。正直、いじめや不登校の話は男の私でもつらいものがあった。嫌いなものを好きになる事は出来ない。人も同じ。だから、いじめはなくならない。しかし、重松作品には希望がある。いじめをどうやって乗り越えればいいのか。いじめにどう向き合えばいいのか、親として子のためにやってあげるべき行動とは。いじめの対処方法なんて学校では教えてくれない。先生が助けてくれる訳でもない。こういう作品の中に乗り越えるヒントが隠されている事を若い世代、そして親の世代に読んで知って欲しい。2021/09/28
みなみ
23
すごく良い本を読んだなぁって思いました。「まゆみのマーチ」は母の愛がいっぱい。母親とは無条件で子供を愛せる存在だと改めて気づきました。「カーネーション」の「ははの日」ももう涙で文字が見えなくなりました。いじめの話は読んでて辛かった。気持ちが弱くなっている時は誰かに側にいてほしいし、また反対に私にできる事があれば「◯◯さんのマーチ」を歌いたいと思いました。2017/09/01
タルシル📖ヨムノスキー
22
東日本大震災後に編まれた重松清さんの自選短編集。中身はどれも読んだことがあるのだけれど、なぜかまゆみちゃんが私を呼ぶ。「もう一度読んで」と。どの物語もなかなかに辛く切なく苦しい。まゆみちゃんが小学校でうまくやっていけなかった時、そのままでいいと言い続けたお母さん。担任の先生に「人に迷惑をかけることは、そげん悪いことですか?」と言ったお母さん。それに対して取ってつけたような常識しか言えないお父さん。他の物語でもそうだけど、父親って、なんでこうダメなんだろう。もちろん自分もそんなダメ親父のひとりなんだけど。2022/09/08
Kaz
20
父親として読んだ。つらく悲しい短編集だった。二人の娘は成人になり、物語のようなつらい時期はなかった。と思いたいが、そう言い切らせない、魂を揺さぶられるような作品群。私の子育ては正しかったのか。父娘の関係はこれで良かったのか。余韻の重さが胸を締め付ける。2016/01/14