新潮文庫<br> そして殺人者は野に放たれる

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新潮文庫
そして殺人者は野に放たれる

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  • サイズ 文庫判/ページ数 318p/高さ 15cm
  • 商品コード 9784101300511
  • NDC分類 326.3
  • Cコード C0195

内容説明

「心神喪失」の名の下で、あの殺人者が戻ってくる!「テレビがうるさい」と二世帯五人を惨殺した学生や、お受験苦から我が子三人を絞殺した母親が、罪に問われない異常な日本。“人権”を唱えて精神障害者の犯罪報道をタブー視するメディア、その傍らで放置される障害者、そして、空虚な判例を重ねる司法の思考停止に正面から切り込む渾身のリポート。第三回新潮ドキュメント賞受賞作品。

目次

通り魔に子を殺された母の声を
覚醒剤使用中の殺人ゆえ刑を減軽す
迷走する「責任能力」認定
不起訴になった予告殺人
精神鑑定は思考停止である
二つの騒音殺人、死刑と不起訴の間
分裂病と犯罪の不幸な出合い
日本に異常な犯罪者はいない?
闇に消える暗殺とハイジャック
心身耗弱こそ諸悪の根源
判決に満悦した通り魔たち
刑法四〇条が削除された理由
日本は酔っ払い犯罪者天国である
もう一つの心神喪失規定「準強姦」
女性教祖「妄想」への断罪
家族殺しが無罪になる国
人格障害者という鬼門を剥ぐ
古今東西「乱心」考

著者等紹介

日垣隆[ヒガキタカシ]
1958(昭和33)年、長野県生れ。東北大学法学部卒業。「『買ってはいけない』はインチキ本だ」(文春文庫『それは違う!』所収)で文藝春秋読者賞、「辛口評論家の正体」(文藝春秋『偽善系2』所収)で編集者が選ぶ雑誌ジャーナリズム賞・作品賞を受賞。メールマガジン「ガッキィファイター」ほか、ラジオ、テレビでも旺盛な活動を続けている(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

鉄之助

127
心神喪失や心神耗弱を理由に、いかに殺人者が罪を無かったことにされたり、軽くされたりしているかを、判決文や新聞資料を丹念に掘り起こし実証している。これは日本の司法の、「犯罪の結果を裁くのではなく、ひたすら動機を裁いている」欠陥だとも指摘している。だから幾多の人を殺傷した「通り魔殺人」の犯人が不起訴となり、微罪でも否認すれば実刑判決が下される。日本の闇だ。2018/10/14

ソルティ

97
職場の図書コーナーで借りたもの。興味深くて時期ずらして2回読みました。これは憲法第39条「心神耗弱状態のものは刑を軽くする」の矛盾をついたものです。統合失調症など精神の病気で幻覚妄想があって事件を起こした、などに適用されるのが本来ですが、覚醒剤、麻薬、飲酒などでも心神耗弱だったら適用されたりする。あと、そういう事を知ってる犯罪者が精神がおかしいフリをする。そういう場合にも使われてしまうからいけないんです。これは「無痛/久坂部羊」の参考文献にもなっています。これ読んでから無痛読むと良いです。2012/10/01

kinkin

50
殺人事件には必ず加害者と被害者がいる。加害者には、心神喪失や心神耗弱といった起訴前精神鑑定の診断結果で不起訴になるケースも多いこと。その不起訴になった加害者が本当に精神障害者だったのか、著者は様々なインタビューや資料を基に検証している。精神障害者も精神障害犯罪者も混同しているのではないか、覚醒剤やアルコーるによる犯罪は、他国の多くは一般の犯罪よりも刑が重いこと、検察側も精神障害者による犯罪を起訴しても結局不起訴となるケースが多いことから、あまり関わらない傾向にあることなど、この本を通して考えさせられた。2014/06/04

James Hayashi

35
新潮ドキュメント賞受賞作。まさしくタイトル通り、殺人を犯していながら罪に問われることもなく、もしくは減刑され野放されている(精神疾患者でない)精神障害犯罪者。被害者やその家族は守られず、加害者に手厚い保護がされている不合理。多くの人が分かっているが、守り通されている刑法39条。「殺人犯はそこにいる」でも取り上げられていた福島章上智大心理学科名誉教授のコメントなど反社会的。罪を犯したなら実名報道され、その後刑期を終えてもGPSで監視するなど必要でなかろうか。犯罪者に甘い日本社会。法律改正も考慮すべき。2019/04/09

たぬきごんべい

31
作者の10年以上にも及ぶ執念の取材で纏められた渾身のルポ。 心神耗弱だと殺人を犯しても無罪もしくは減刑になる不思議。 世界の中で日本だけが法律に取り残され明治からの判例に習って法律を変えないことに問題提起をしている。 覚醒剤使用して空き巣に入り、二人を殺害してから、 蚊取り線香に火を漬けてガス栓をひねり火事を目論んで証拠隠滅を図った犯人が、 空き巣に入る直前にも覚せい剤を打ち直したと証言。これにより心神耗弱を勝ち取り減刑に成功。 まさに減刑された犯人が味をしめ学習して野に放たれる。 ★4.5 2019/02/20

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