内容説明
8カ月で生母と別れ、5歳で養子となった五十嵐健治は、一攫千金を夢見て16歳で家を出た。日清戦争の軍夫、北海道のタコ部屋暮らし、三越百貨店の宮中係と、波瀾万丈の道を歩んだ彼は、キリスト教信仰に目覚め、人の垢を洗うクリーニング業に辿り着く。日本初のドライ・クリーニングの開発、戦時中の宗教弾圧との闘い。熱烈な信仰に貫かれた、クリーニングの「白洋舎」創業者の生涯。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
優希
110
伝記なので、淡々としていると思いきや、著者がその生き様を直に見てきたようでもあり、魂が乗り移ったようでもある筆致で生き生きと描いていました。日本初のクリーニング店「白洋舎」の創業者・五十嵐健治の生涯の物語。キリスト教の深い信仰の中で様々なことに耐えつつ、希望を持って生きることの大切さを教えられました。どんな困難の中でも愛を忘れず、赦し、受け入れ、感謝を忘れないことで前に進める。壮絶な人生と信仰心による語りが心に響きます。2016/08/07
ソーダポップ
52
ドライクリーニング白洋舎の創業者、五十嵐健治氏の伝記的物語。80歳近くなった。氏が、過去を振り返って一人称で語りながら物語は進んでいきます。氏は、駆けて、駆けて、駆け通した一生でした。キリストを信じてからは苦しい走りではあったが、嬉しくて堪らないかのように駆けていった。本文の「辛ければ辛いほど、どのような形で神が助けてくださるかが、楽しみでならなかった。人間変わるものですな」と言ったセリフがとても印象に残りました。 2021/02/20
優希
50
再読です。白洋舎創業者・五十嵐健治の伝記物語。本人が語っているような臨場感があります。波乱万丈の道を歩んだ五十嵐がキリスト教に目覚めてから、クリーニング業で生業をたてようと決意するのが凄い覚悟だと思いました。白洋舎の原点はキリスト教なのですね。信仰から生まれるものがあるのだと改めて気づかされました。2022/03/17
ach¡
44
主人公の一人語りパティーンで白洋舎の創業者の生涯を描く/思い立ったが吉日とばかり即行動タイプの主人公に己が被りすぎてもはや他人とは思えぬ。ん?つーことは、もしかすると私も大成をなすんじゃまいか(´・_・`)うへへ♡と、この時点で人間がちゃうな。。でも今回はことさら神を信じてみたくなったぞ。たとえ神の存在は信じきれなくても祈り続けることに意味があるのかもしらん。信仰を持つことで人間が円熟し、心の平安が訪れるなら私も喜んで祈りたい&正しくありたい!と強く想うのだが、結局信仰の厳しさに畏れ慄き即行動できてねぃw2016/09/03
Midori Nozawa
20
たぶん40代に本書を購入して、今回は再読だった。白洋舎と言うクリーニング店を創業した五十嵐健治氏が実人生を語っているかのように三浦綾子の文章は素晴らしい。1877年生まれの五十嵐氏は日清、日露、第一次大戦、第二次大戦をリアルタイムに経験した。洗濯屋という職業が日本にまだ少なかった時代に十代で洗濯屋で働いた経験が、五十嵐氏の起業のヒントにもなったのだろう。生後間もなく実母が離縁され、たらいまわしで育てられ、その後養子となった。二人の母への思慕が強く描かれている。本書で日本の歴史がとてもよくわかった。2022/02/04




