内容説明
暴力団から寄付金をもらうのは悪いことなのだろうか?豊かさの実感がないというが、こんなに豊かな国はなかなかないのではないか―。新聞記事というのは、油断すると、うのみにしがちだが、その陰には偽善や誤りがひそんでいることもある。毎朝、五紙の新聞に目を通す著者が、様々な記事の裏側に、安っぽい正義や感傷を排して鋭く迫る。「新潮45」の人気連載をまとめたエッセイ集。
目次
狂奔する善人たち
“罪なき旗”があるか
死んでもいい旅
探偵ボタンを探す
『危険な話』の中の危険な話
刺客は修道女に成り済ます
立ち尽くす私
偽善者の祈り
懸賞小説に落選する法〔ほか〕
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
オカピー
9
ご主人が毎日新聞を取って来て「はいよ」と渡してくれる。タイトルの「夜明けの新聞の匂い」というのも、いいです。インクの匂いがしてきそうで。以前は、3紙の新聞を読んでいた時期もありましたが、定年退職後、1紙にしました。新聞の記事を情報の入手手段の一つと考え、結構鵜呑みにしていました。もっと、深く考え自分の考えをしっかり持たなくてはと思います。最後のほうの、死についての考察、考えかた、自分の母親の死、色々考えてしまいました。今は、ご主人も無くなられ、曽野さんも90歳を変えておられる。何時までも、自然体で元気に。2023/07/23
あや
4
多種類の新聞を購読し小さな記事の人生に思いを馳せる。それが人生をどんなに豊かにすることか。2020/10/21
Nami Yamamoto
0
今は亡き心の師が15年ほど前、「古本屋で買ったが要らなくなった本」を紙袋に入れてごっそり下さったことがある。そのうちの1冊を手に取った。 曽野さんが新聞に載ったニュースを題材に綴るエッセー集。書かれて20年以上経つのに、今なお言葉が古びない。リクルート未公開株問題、暴力団排斥、昭和天皇崩御、信仰、教育、障害者…あらゆる事象を彼女の常識と信念に照らして語る。徹頭徹尾、筋の通った強い女性。強いが故に、生半可な体制批判を一切受け付けない厳しさがあり、その厳しさにたじろぐこともある。キリスト教信仰をもとに「建前を2015/01/02
Hiroyuki Niwa
0
清々しい読書感。エッセイだけどいろいろ気づくことが満載。戦争と海外ボランティアの経験やキリスト教の視点は今自分が日々対峙する問題に違った視点からのヒントを与えてくれ、視野が広がるのを感じた。この本が書かれた時代、日本はまだバブルの残滓を享受していた。その時代にあって、現在でこそ明らかである矛盾と問題提議ができるというのは、普遍的な価値観というものの存在の証明といえるだろう。今書店の本棚に並ぶエッセイの中で17年後に読む価値のあるものは幾つ残っているだろうか?2014/02/09