感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ピチャ
15
短編の集まった一冊。 いずれの作品も自己との闘いを描いている。自分がどれだけ卑劣な存在か、どうしたら不快感から抜け出せるのか。遠藤周作の作品はこうした自己との向き合いを通して生き方を模索していくので、宗教的でなく短編で身近な問題に触れている読みやすい一冊だと思う。もちろん時代背景が少々古いものだが…。 特に死と向き合う作品は正解のなさを感じながらもそれは悪い選択肢か、最悪の選択肢か、少しずつ考えを深めていく。こうした一幕一幕が生活を形作っているとしみじみと感じる一冊だった。2020/03/19
浪
10
遠藤周作の小説をはじめて読んだのはセンター試験の過去問として解いた「肉親再会」。現代文の過去問を解く作業は受験期の数少ない楽しみの一つで、20年分くらい解いた記憶がある。本作は人間の暗い感情に焦点を合わせ情実な表現と論理的な構成で描ききった完成度の高い短編集となっている。特に印象的だった話は「イヤな奴」で主人公は癩患者達の慰安のために病舎を訪れ一緒に野球をするのだが、塁間で挟まれた主人公は癩患者に触れられて感染することを恐れ立ちつくしてしまう。その様子を見た二塁手癩患者のやるせない一言が胸を抉る。2018/06/09
gushwell
10
遠藤周作の初期の短編集。11の短編が収められています。どれも人の心の闇や罪深さを題材にしています。それは決して悪に満ち満ちている人ではなく皆普通の弱い人々です。その中でも、マゾヒストとして堕ちてゆく若い画家を扱った表題作の「月光のドミナ」、戦地で人を殺害し心に傷を負い足が動かなくなった男を扱った「松葉杖の男」、入院中の出来事を綴った「葡萄」が特に心に残りました。自炊してiPhoneで再読。2014/12/13
京橋ハナコ
3
再読。昭和三十年代の作品集。流石に生まれる前ばかり。ほとんどの作品に病気の影が落ちる。2013/04/12
Haru
1
1958年初出。短編集。前半は遠藤周作さんの実体験でしょうか? 後半は、小説です。戦争を体験した世代の持つ深い傷つきと戦後への不適応感、人間のエゴイスティックな弱さ、誰にも内在する悪や異常性、死など、闇を感じさせる作品の多い一冊でした。2017/07/30