内容説明
大作絵画の制作依頼を受けて赴いた真鶴の教団本部で、奇しくもあの謎の男と邂逅、男の眼許に義兄の面影を見た山辺修二は、義兄の出生の秘密を探り始める。意外な事実が明らかとなるにつれ、事件は更に惨劇の輪を広げた…。社会の底辺に蠢く人間の深い怨嗟を見据え、家と土地を餌に信者を呼ぶ新興宗教や、銀行融資の不正疑惑など、恐るべき予見に満ちた、巨匠最盛期の意欲的長篇。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
hatayan
46
義兄が殺されたのは人違いではないと見立てた修二は、義兄の出生の秘密、銀行の地元支店と教団との抜き差しならぬ関係に気づきます。結末はあまりに突然で脈絡のないもの。これまで張り巡らせてきた伏線を回収したとは言えないのではないか、下巻に入って死ぬ人間が多すぎるのではないかなどと読み終えて思うところがありました。表紙の裏には「巨匠最盛期の意欲的長編」とありますが、読み続けるのは厳しい印象のある一冊でした。2020/10/08
シュラフ
23
ラストのあまりのご都合主義のような結末には唖然・・・。だけど、松本清張さん やはり読み手を ひきつけること ひきつけること その手法はさすが。事件の真相をめぐって あっちに行ったりこっちに来たり と読み手があきることはない。だから強引なつじつま合わせの結末も許せる。教団に乗り込んだ絵描きの山辺は、なんと銀行の頭取の絞殺死体に出くわす。今まで謎であった点と点があたかもひとつの線になって結びつくようにして一気に事件解決にまで至る。各人の人間関係の結びつきの描写は希薄なのだが、各人の抱えた背景の描写は丁寧。2015/05/06
そうたそ
17
★★☆☆☆ 上巻では大きく展開していったストーリー。一体これはどういう結末になるのかという期待感も抱かせる内容だったが、風呂敷を広げっぱなしのような下巻で清張作品にしてはお世辞にも面白いとは言えなかった。散々人が死んだ割にこの結末!?という期待はずれな感もあるし、内容としてもこれはミステリとしては到底評価できないのでは……と思ってしまう。凶悪な新興宗教など、どこか予見性を感じられる部分もあるストーリーだったが、それ以外はさして読み所がなかった。娯楽性に振り切りすぎて失敗したような印象。2020/12/09
沼田のに
7
話が込み入ってきて、本来の殺されるべき人と犯人が希薄になるほどの背景を提示してしまって残りのページが少なくなって焦る。一つ一つの出来事はなるほど理屈が通るが全部纏まるとありえない事になってしまうところに、この作品の名を俺が知らない理由があるんだと思う。大御所においても全ての作品が名作でないのを知ったのはなんかうれしい。5/102015/04/15
ササヤン
6
後半に進むにつれて、面白さが半減する感じだった。真犯人も伏線がなさすぎて、わけがわからんかった。しかし、信仰心がない人物が金儲けだけの新興宗教団体とはいえ、宗務局の役職につけるのが一番不可解。今回の松本清張作品は駄作だった。2019/03/08