出版社内容情報
京都の小さな旅館に生まれた夏目若葉は、父を知らず、母は幼い頃に失踪し、祖父母に育てられた。二十歳を過ぎた若葉は、新米の仲居として修行を始めるのだが…。
内容説明
日本の顔やと思わんとあかん―新米の仲居として、京都の老舗旅館で修業を積む若葉。祖父母が細々と営む町家旅館にも時代の波が押し寄せて…。小説すばる新人賞受賞第一作。
著者等紹介
中村理聖[ナカムラリサト]
1986年福井県生まれ。早稲田大学第一文学部卒業。2014年「砂漠の青がとける夜」で第二十七回小説すばる新人賞を受賞しデビュー(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ゆみねこ
78
中村理聖さん、初読み。幼いころに母親に捨てられ、町屋旅館を営む祖父母に育てられた若葉。高校時代にいじめに遭い、自分に自信が持てず、思いを上手く言葉に出来ない21歳。老舗の料理旅館に仲居として勤めながら実家の山吹屋を手伝う彼女の成長譚。若葉のいじいじした性格がちょっと鼻につきましたが、京都の四季とおもてなしの心を想像しながら読了出来、読後は爽やかでした。2017/07/03
どぶねずみ
38
これは若葉が自分の居場所を見つける物語。自分の居場所が定まらないから、何をやるにしても自信が持てない。または、その逆かもしれない。あの時は大変だったなぁと気づくのはずいぶん後になってからだけど、紺田屋で働く若葉はずっとそんな風に感じていたのだろう。動きが中途半端で人の目ばかりを気にしていては、結局空回りばかり。若葉の生い立ちもそうさせていたのかもしれない。時々泣ける良い話だったし、慎太郎との恋バナが気になるなぁ。2020/06/13
トラキチ
37
作者は小説すばる新人賞を受賞されており、本作が受賞後の二作目の作品となる。 京都の町家旅館の娘として生まれた主人公の若葉の成長物語であるが、父親を知らず祖父母に育てられいつか自分を置いて失踪した母親に会えるかどうかという希望を捨てずに現実にもがきながら生きてゆく様が読者に伝わってきます。シャキシャキした女性読者が読まれたら多少イライラするかもしれませんが、男性読者は可愛く思えそうなキャラとも言えます。伝わるのは、祖父母の孫に対する愛情であり挫けそうになりながらも立ち向かって行く姿が儚げで胸を打たれます。 2017/11/04
ともくん
33
幼い頃に、母に捨てられた二一歳の若葉。 ここではないどこかへ行きたいと願いながら、実家の京都の町家旅館で働き続ける。 自分の気持ちが分からなくなり、自信がなくなってしまう。 いつまで、こんな感じなのか… 果たして、若葉は自分の居場所を見つけられるのだろうか。 2023/09/16
Kei
32
私は、主人公にイライラしませんでした。大人の中で働くと、謙虚に下がってしまう。たとえ、若さがなく消極的であろうと、仕様がない面があります。ただ、立派であろうと思われた、二つの宿の大旦那さんが、かたや時代に逆行し、かたや実娘を許さず、意外なかたくなさを隠しもっていました。そう、京女よりも、もっと手強いのは、京男!先の展開は読めるけれど、シリーズ化してもらいたいなぁ~。2017/11/06