出版社内容情報
内容説明
「皆さん。こんなおかしな小説はありはしません。信じて下さい」…。近未来の■■。いとうせいこうの長編小説。
著者等紹介
いとうせいこう[イトウセイコウ]
1961年、東京都生まれ。早稲田大学法学部卒業。編集者を経て、作家、クリエーターとして、活字・音楽・舞台など、多方面で活躍。著書に小説『想像ラジオ』(第35回野間文芸新人賞受賞)、エッセイ集『ボタニカル・ライフ』(第15回講談社エッセイ賞受賞)などがある(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
fwhd8325
50
近未来の、それも足音が聞こえるような、そこにきているような未来が舞台。危機感を感じさせる面も、シニカルで思わずにやっとしてしまう面も持ち合わせている。2018年に暮らしている今、やはりこの作品は警告なんだと思います。2018/04/03
ヘラジカ
31
『ノーライフキング』以来のいとうせいこう。この作家をあの一作で侮っていたことに気付かされた。今まで無視してきたことが悔やまれる。奇抜な設定のなかで書かれる文学論、 「小説とは何か」。随筆に虚構が混じることで物語へと変貌し、境界がゆらいで小説が生まれる。変わった構成だが、作者が小説、ひいては言葉自体に真摯でひたむきに向き合っていることが伺える一冊だと思う。最後の力強さに打たれた。これは他の作品も絶対に読まなければ。2018/02/07
そうたそ
29
★★☆☆☆ 小説禁止令が発布された近未来にて、それに賛同する随筆を獄中にて書く語り手だが――。小説という形式を借りた小説論のような内容で、読み始めは結構面白かった。著者ならではの目線で小説というものを見つめている感じ。途中からやや複雑さを感じ難しいなあと思いつつも読了。頭のいい人が皮肉をきかせつつもまとめあげた文章という感じで、敷居が高いっちゃ高い。わかりやすく書かれているとは思うんだけれど、随所に言い回しの難しさとか感じてしまう。もっとじっくり読み込むべきなんだろうけれど、その根気が自分にはない。2018/04/16
*
20
筆者自身が文庫版の解説を担当した、吉村萬壱さんの『ボラード病』の影響を受けているかな、と感じる(間接的な)ディストピア的表現が散りばめられている▼実在と架空の作家(解釈には幅あり)が混在するカオスも面白い。特に、ベネディクト・アンダーソンを引用している箇所は考えさせられた。「国家」も一つの小説なのか?▼言われてみれば、なぜ小説ってこの世にあるんだろう。登場人物から何かを学ぶということは、結局は現実から目を逸らすための材料を獲得するに過ぎないのだろうか?2018/07/18
ぺったらぺたら子
19
何故我々は小説を書き又、読むのか。そして書くとは読むとは何なのか。著者の小説愛と、どんどん抑圧的に歪む社会への警鐘が意外にも叙情的につまり和風に哀しく滲む(飽くまで日本文学たらんとするのだろう)傑作。絶妙のタイミングでバートルビーの決め台詞が放たれるその哀しさ!複雑に作りこまれながらも懇切丁寧に手の内を明かし難解さに陥ることなく、寧ろ現代文学入門的に解りやすく作られていて、小説発生の現場・起源に立ち会う事が出来る。私はこれは何より生の一回性の尊さ、愛と自由と小説愛を謳った、美しい小説なのだと胸を打たれた。2018/04/15