出版社内容情報
英国を歩く紀行文学の最高峰。初の文庫化!今でも読まれ続けている19世紀の英国人チャールズ・ラムをこよなく愛した庄野潤三が、彼の生地やゆかりのロンドンを訪れた名随筆にして滋味あふれる紀行文学。
内容説明
英国の名文家として知られ、今もなお読み継がれているチャールズ・ラム(1775~1834)をこよなく愛した著者がロンドンを中心にラムゆかりの地を訪れた旅行記。時代を超えた瞑想がラムへの深い想いを伝え、英国の食文化や店内の鮮やかな描写、華やかなる舞台、夫人とのなにげない散歩が我々を旅へと誘ってくれる。豊かな時間の流れは滞在記を香り高い「紀行文学」へ。
著者等紹介
庄野潤三[ショウノジュンゾウ]
1921・2・9~2009・9・21。小説家。大阪生まれ。大阪外国語学校在学中、チャールズ・ラムを愛読。九州帝国大学卒。1946年、島尾敏雄、三島由紀夫らと同人誌を発行。教員、会社員を経て小説家に。55年、「プールサイド小景」で芥川賞受賞。57年から1年間、米国オハイオ州ガンビアのケニオン大学で客員として過す。60年、『静物』で新潮社文学賞、66年、『夕べの雲』で読売文学賞、71年、『絵合せ』で野間文芸賞を受賞。芸術院会員(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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U
25
著者が愛するイギリスの作家ラムゆかりの地を旅した記録。ラムに興味がないと読むのがしんどい場所(関連書籍や書簡からの引用、周辺人物のエピソード)もあったけれど、旅に同行しているような感覚を味わえた興味深い作品でした。この旅を忘れまいと記憶に刻みつけんとする庄野さんの姿勢が、こまやかな描写から伝わります。毎回登場する食事の場面は本作の楽しみのひとつかも。何気ない会話や動作を含めた人とのやりとり、とくに奥さんとのやりとりは読んでいて何とも言えず心地良く、わたしにとって理想です。ますますファンになりました。2017/10/23
ぱせり
14
ラム、ラム、チャールズ・ラムに関する文章が70%くらいか。いくら語っても語り尽くせないとばかりに。悲しいけどついていけてない。でも気になる。ラムの「エリア随筆抄」並行で読み始めています。ラムの隙間に書きこまれている庄野夫妻の旅のスナップ(?)は、やはり楽しい。著者のおおらかで屈託のない人柄がにじみ出る文章にほっとする。 2012/03/13
はるたろうQQ
2
10日に渡るロンドン滞在記。著者が好きだというチャールズ・ラムの伝記がない交ぜに書いてある。何故ラムが好きなのかを分析しない所が著者らしい。嫌いなものには一切言及もしないし、好きなことしか書かない。だからと言って退屈にはならない。最晩年の小説より緻密というか、重量感が感じられる。この小説執筆後著者は大病をして、小説の世界は身辺の出来事に焦点があてられもっと狭まる。このような小説は二度と書かれることはなかった。自分の体験しか書かない著者だが、他人の人生への広がりもあって成功した例の一つではなかったかと思う。2020/08/30
コホン
2
こんなにイギリスで食べた料理が「おいしい」と言い続けている作品は読んだことがない。好きな作家さんの足跡をたどるロンドン滞在記。贅沢な旅。2014/06/24