内容説明
「きみは我が忘れもはてぬはるびんなりしか。/はるびんよ…。」昭和十二年四月、旅行嫌いの犀星が、生涯でただ一度の海外(満洲)旅行に出かけた。「古き都」哈爾濱は、犀星の詩心を刺激し、後年『哈爾濱詩集』となる抒情詩の数々を産ませ、また、満洲で棄て子捜しをする男を中心に、船上で出逢った人々の荒唐無稽な人生を描いた小説『大陸の琴』を書かせた。本書は、随筆「駱駝行」他三篇を併録した“大陸もの”作品集。
目次
哈爾濱詩集(詩)
大陸の琴(小説)
駱駝行・あやめ文章(随筆)(駱駝行;生菜料理;大陸の春;あやめ文章)
著者等紹介
室生犀星[ムロウサイセイ]
1889・8・1~1962・3・26。詩人・小説家。石川県生まれ。本名・照道。不義の子として、生後すぐに貰い子に出される。12歳で金沢高等小学校を中退。地方裁判所の給仕をしながら俳句を学び詩作を始める。1910年、志を抱いて上京。以後、帰郷と上京をくりかえすが、萩原朔太郎、山村暮鳥らと知り合い、16年詩誌「感情」を創刊。18年『愛の詩集』『抒情小曲集』を出版、詩壇に新風を起こす。19年自伝的小説『幼年時代』『性に眼覚める頃』を発表して一躍小説家としても認められる(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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メタボン
19
☆☆☆ 旅順、大連、哈爾浜の旅情を書きたかったのであろう、詩集はその旅情を馨しく詩っている。大陸の琴の方は、人物造形が浅すぎるきらいがあるのと、犀星特有の匂うような文章が少ないのが残念。犀星の小説としては完成度は低いと言わざるをえない。2018/09/07
うた
10
詩集のみ。ハルピンでの旅の追憶、と思いきやロシア人ウェイトレスの尻を眺めてたりしている笑。谷川俊太郎さんもそうだけれど、犀星のように好きに歌うくらいじゃないと、生涯詩人などやっていられないのかもしれない。2016/01/19
月
6
★★★★☆(室生犀星はその作品(本)からインクの匂いが香り立つ作家である。匂いのする作家もいれば匂いのない作家もいる。その匂いにも旧・新の個性と強弱がある。犀星は強い。インクの匂いというのは情景への繋がりでもある。そして犀星の場合、その匂いは遠く金沢の犀川畔へと辿り着く。哈爾濱詩集は、犀星の最初で最後の海外旅行、その道中を詠った詩。当時の犀星の心情と旅情(憧憬)がよく伝わってくる。小説・大陸の琴は、これまでの作品とは異色なもの・・と思ったら朝日新聞のへ連載小説だったようだ。犀星には独特の香りがある。) 2012/02/20
YY
1
大陸を書くとどうしても雑多なイメージの作品を書いてしまうものなのかね。ということで、小説よりむしろ随筆の方が犀星らしい心情が出ていて面白かった。詩は臀がどうのというやつが一番。やっぱり女性をみてこそ、書いてこそという感じがした。2014/10/28