講談社文庫<br> 中指の魔法

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講談社文庫
中指の魔法

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  • サイズ 文庫判/ページ数 228p/高さ 15cm
  • 商品コード 9784062775656
  • NDC分類 913.6
  • Cコード C0193

出版社内容情報

黒革の長手袋を常につけている祖母の「おおばあ」。おおばあの不思議な力と、「呼吸」の秘密とは。色鮮やかなぼくの成長物語

雑然と生い茂る庭にそびえたる古い一軒家。「おおばあ」ことぼくの祖母はここに一人で暮らしていた。黒い革でできた頑丈な長手袋を常に身につけ、威風堂々としているおおばあ。その家の庭には、檸檬の木、枝垂れ桜、木蓮、枇杷の木、南天、花水木・・・てんでばらばらに木々が埋めつくしていた。
ぼくはこども時代のほとんどをこの古めかしい家ですごし、赤頭巾ちゃんに出てくるオオカミみたいに大きな口と大きな目と大きな耳を持つおおばあといつも一緒だった。

ぼくに父さんはいない。
いつの頃からいなくなったのか、ぼくは知らない。母さんもおおばあも父さんなんてはじめから存在していなかったかのように振る舞っている。ぼくたちの間で父さんの話はご法度だった。

 おおばあの家にはいつも誰かしら訪れていた。
 おおばあが不思議な力を持っているからだ。相談に来た人は何かしら、そのときのお礼の気持ちをおいていく。いえの中はガラクタでいっぱいだった。
 そんなある日、ぼくは病院で一人の眠っている少女に出会う。彼女と呼吸を合わせている内に、ぼくは彼女の夢の中に入って行った・・・・・・。

「眠りは安息をもたらすよ。明日へのエネルギーを蓄える糧となる。夢の世界は束の間の世界だ。束の間だからこそ幸福でいられるんだ。夢の世界に長くいちゃいけない。取り込まれてしまうからね。エネルギーは外側ではなく内側で全部使われてしまう。長く長く続く夢はあの子から体力を奪っていくだろうよ。そして夢か現実か判らないまま彷徨い続けることだろう。帰れなくなるんだ、永遠に」

――祖母との交流、母子の関係、父の秘密、そして友情。「呼吸」の意味を知る、ぼくの成長物語
  ワルプルギス賞で人気を集めた、片島麦子のデビュー作。

内容説明

黒革の長手袋をはめ、威風堂々としているぼくの祖母「おおばあ」。父さんのいないぼくは、おおばあと母さんに育てられてきた。ある日おおばあから「呼吸合わせ」の話を聞く。そして、眠り続ける少女との出会いにより、“呼吸を合わせる”ことの真の意味を知る。瑞々しく色鮮やかな「ぼく」の成長物語。文庫オリジナル。

著者等紹介

片島麦子[カタシマムギコ]
1972年広島県生まれ。第28回大阪女性文芸賞佳作、第4回パピルス新人賞特別賞などの受賞を経て、デビュー作となる『中指の魔法』でワルプルギス賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

はる

54
不思議な力をもつ「おおばあ」とぼく。どうやらぼくにも不思議な力があるらしい…。少しファンタジックで優しく切ない物語。少年の成長する姿が爽やかです。初めての作家さんですが、これは今後、期待大ですね。読み終わって暖かい気持ちになりました。面白かったです。2016/04/20

ぶんこ

48
中指だけが短い「おおばあ」には不思議な力があった。孫の「緑(ロク)」にも力が伝わり、眠りつづける「美瓜(ミウリ)」を助けるが、その後も辛い事があると眠りの世界へ逃避。人の悩みを救う事の出来る力を持つという事の幸せと辛さ。おおばあには立ち向かう靭さがありましたが、ロクは大丈夫かなと心配になりましたが、天から父親が助けにきてくれました。何度も眠りの世界へ逃避するミウリ。大学生になったロクは、またしても助けに行き、ミウリに対する腹立ちから逃げ出しますが、思い直して助けに行く場面で物語は終わります。2016/05/06

ゆうゆうpanda

41
辛い体験をした少年少女は自分を守るために心に鍵を掛ける。声を失う、記憶を刷り替える、夢の世界へ逃げ込む。でも、そんな弱さを自分自身が一番嫌っていて、そのことが自分を更に傷つける。その傷を癒してくれるのが中指の魔法。「袖振り合うも他生の縁」ファンタジーには不釣合いな諺がこの魔法の正体なのではと思う。初代の使い手「おおばあ」。見事な食べっぷり、謎の黒い皮の手袋、威圧感たっぷりで歯切れのいい物言い。ラピュタのドーラを思い浮かべてしまった。人間の顔に置き換えれないまま夢のシーンへ。ジブリ…当たらずと雖も遠からず?2016/04/26

はつばあば

36
祖母の不思議な力を受け継いだ孫。古い一軒家に木々の庭。それだけで引き込まれる。夢の中に逃避する内容も幼い頃を思い出させる。現実を受け入れれてこそ成長していく。・・・いい本でした。2015/01/14

むぎじる

26
特別な力を持ったおおばあと、数学者の母を持つ緑(ろく)。現実との折り合いがつかず、眠ることで自分を守ることにしたミウリとの出会いや、おおばあの教えは、緑に「認める」ことを教えてくれたのかもしれない。嫌なことから目を背けたり、逃げてしまったら、楽しかった思い出さえなかったことになってしまう。受け入れて受け止めよう。思い出は消えてなくなったりしない。いつだって好きな時に取り出せるんだ。緑の成長物語。2013/12/18

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