女の子を殺さないために―解読「濃縮還元100パーセントの恋愛小説」

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  • サイズ B6判/ページ数 303p/高さ 19cm
  • 商品コード 9784062175203
  • NDC分類 910.26
  • Cコード C0095

出版社内容情報

恋愛小説とは、「女の子を大量に殺す物語」である? 川端康成、庄司薫、村上春樹が「セックスと女の子」を物語に埋め込む秘密を探る

なぜ『伊豆の踊子』ではヒロインの全裸を目にした主人公は爽やかに笑うのか。なぜ村上春樹作品の主人公は『風の歌を聴け』ではセックスをしなかったのに、その後はあのような類型的セックスするようになったのか……。
作品中で「女の子を殺す」村上春樹と、「女の子を殺さない」庄司薫。その対比を日本近代文学史の系譜の中で考察した本著者は、この両者は「一見まるで正反対の物語を書いたようでいて、同じ取り組みをしている」と喝破します。
「主人公がセックスしたせいで女の子が死んだ話」は本質的に物語において要請されているのでは? 古井由吉、柴田翔、坂口安吾、川端康成らの「女の子の殺し方」を追いかけることで、本著者がこの仮説を検証していく大型評論です。

第一章 村上春樹
●男の子はつらいよ
●「ゲーム」で「人工的」でいまいましい小説とはどういうものか?
●そしてハートフィールドの謎解き
第二章 古井由吉
●なにはなくとも幼なじみ
●女の子が前を歩いて男の子が導かれること
第三章 川端康成
●「キャラクター」として可愛がられる「薫くん」
●『赤頭巾ちゃん』と『ライ麦畑』
●カオルクン的気持よさの発見
●ラブコメと川端康成
●「薫」という名前のメッセージ
●文芸評論の自己愛 
第四章 庄司薫
●女の子を必要としない物語ってなんですか?
●1969年の逃走論
●キャラメルママとエレクトロニック・マザー
●「ママ」を「ママ」らしくさせないために
第五章 坂口安吾
●女の子が死ぬのは、泣かせるため?
●女の子が歩くと落っこちること
●女の子は落ちることにより「ママ」から抜ける
●池の下の雲
●「由美ちゃん」の誕生
●物語論の底へ
第六章 柴田翔
●セックス=女の子が落ちること
●石原慎太郎によるセックスの二つの区別の発生
●崖の上の娼婦
●終わりに……嫌われるために

【著者紹介】
(かわた・ういちろう)
評論家。
慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科にて修士号取得。
1996年第39回群像新人文学賞評論部門優秀賞「由美ちゃんとユミヨシさん 庄司薫と村上春樹の『小さき母』」でデビュー。
「ユリイカ」「群像」などで執筆。

内容説明

恋愛小説はなぜ女の子を殺してきたのか―。村上春樹作品に流れ込んだ「女の子殺し」のコードを解析し、書き手たちが「セックスと女の子」を物語に埋め込んだ秘密とメカニズムを探る。

目次

第1章 村上春樹の溜息
第2章 古井由吉の反復
第3章 川端康成の憂鬱
第4章 庄司薫の逃走
第5章 坂口安吾の透明
第6章 柴田翔の消失

著者等紹介

川田宇一郎[カワタウイチロウ]
1973年東京生まれ。同志社大学文学部卒業、慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科修士課程修了。「由美ちゃんとユミヨシさん 庄司薫と村上春樹の『小さき母』」で第39回群像新人文学賞評論部門優秀賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

烟々羅

17
村上春樹と庄司薫の文にある類似を意図したものとして提示してはじまり、川端康成と石原慎太郎を互いに影響を与えた作家として結ぶ。文学部ってのは同時代のやりとり・ダイナミズムを楽しむものなのだなと羨ましくなる。わたしにはこんな俯瞰と構成の力はないから、今までに読んだ本を思い出させられ、鼻づらを引きずり回されての旅をただ楽しむだけだ。 いま隣の書庫には、村上春樹デビュー直前、中高生のころに「片岡義男は軽小説扱いされているけれど康成の正当な後継だ」と集めた文庫が多数ある。言及がないこの評論を下敷きに読み返したくなる2014/02/05

安南

11
恋愛小説は大量の「女の子」を殺してきた。その引力=『物語』の解明。用意されたリンク、川端康成→庄司薫→村上春樹。さらに、ヘッセ→サリンジャー→庄司→村上。吉井由吉『杳子』=『ノルウェイの森』。驚きの坂口安吾=村上春樹!氷室冴子、中上健次、ナウシカ、『地球へ…』。『眠れる美女』がラブコメの起源⁈ 横軸には『逃走論』縦軸には『砂の女』を据えて「女の子の死と落下」にまつわる類似点や関連が、縦横無尽に展開されて…。かなり強引だけど、疾走感のある論評で、読んでいて楽しかった!2013/02/07

9
楽しめた?面白かった?ん……interestingが一番しっくりくるような、来ないような。――恋愛小説が一番女の子を殺しているというのは納得。一番かどうかはともかく、恋愛小説ではたくさんの女の子が死んでいる。――「セックス=女の子が落ちること」のあたりが一番面白い。女の子にしか下降はできない。男の子はそれを引き上げる役割。そこに行きつくまでの過程が面白いので、一読してみて欲しい。2012/08/23

ステビア

8
一年前は非常に興奮しつつ読んだが…いま読むとちょっと冗長&論点も拡散しがちだなぁ。2014/04/03

sawa

7
★☆☆☆☆ 「恋愛小説は女の子を殺してきた」という切り口からの評論ということで、斎藤美奈子の『妊娠小説』みたいなのかと思ってたのに、全然違った。よく共通点を(無理やり)調べたなとは思うけど、読み物としては格段に落ちる。タイトルも、章題(「村上春樹の溜息」、「庄司薫の逃走」)もキャッチーだけど、完全に名前負け。章題で取り上げられた作家は本編全体にわたって取り上げられてるし、内容と結びついてない。他の評論家の批判ばかりだけど、文章は変だし、なんでamazonの評価が高いのか全然分からない。自作?身内??(図)2012/08/27

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