出版社内容情報
恋愛小説とは、「女の子を大量に殺す物語」である? 川端康成、庄司薫、村上春樹が「セックスと女の子」を物語に埋め込む秘密を探る
なぜ『伊豆の踊子』ではヒロインの全裸を目にした主人公は爽やかに笑うのか。なぜ村上春樹作品の主人公は『風の歌を聴け』ではセックスをしなかったのに、その後はあのような類型的セックスするようになったのか……。
作品中で「女の子を殺す」村上春樹と、「女の子を殺さない」庄司薫。その対比を日本近代文学史の系譜の中で考察した本著者は、この両者は「一見まるで正反対の物語を書いたようでいて、同じ取り組みをしている」と喝破します。
「主人公がセックスしたせいで女の子が死んだ話」は本質的に物語において要請されているのでは? 古井由吉、柴田翔、坂口安吾、川端康成らの「女の子の殺し方」を追いかけることで、本著者がこの仮説を検証していく大型評論です。
第一章 村上春樹
●男の子はつらいよ
●「ゲーム」で「人工的」でいまいましい小説とはどういうものか?
●そしてハートフィールドの謎解き
第二章 古井由吉
●なにはなくとも幼なじみ
●女の子が前を歩いて男の子が導かれること
第三章 川端康成
●「キャラクター」として可愛がられる「薫くん」
●『赤頭巾ちゃん』と『ライ麦畑』
●カオルクン的気持よさの発見
●ラブコメと川端康成
●「薫」という名前のメッセージ
●文芸評論の自己愛
第四章 庄司薫
●女の子を必要としない物語ってなんですか?
●1969年の逃走論
●キャラメルママとエレクトロニック・マザー
●「ママ」を「ママ」らしくさせないために
第五章 坂口安吾
●女の子が死ぬのは、泣かせるため?
●女の子が歩くと落っこちること
●女の子は落ちることにより「ママ」から抜ける
●池の下の雲
●「由美ちゃん」の誕生
●物語論の底へ
第六章 柴田翔
●セックス=女の子が落ちること
●石原慎太郎によるセックスの二つの区別の発生
●崖の上の娼婦
●終わりに……嫌われるために
【著者紹介】
(かわた・ういちろう)
評論家。
慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科にて修士号取得。
1996年第39回群像新人文学賞評論部門優秀賞「由美ちゃんとユミヨシさん 庄司薫と村上春樹の『小さき母』」でデビュー。
「ユリイカ」「群像」などで執筆。
内容説明
恋愛小説はなぜ女の子を殺してきたのか―。村上春樹作品に流れ込んだ「女の子殺し」のコードを解析し、書き手たちが「セックスと女の子」を物語に埋め込んだ秘密とメカニズムを探る。
目次
第1章 村上春樹の溜息
第2章 古井由吉の反復
第3章 川端康成の憂鬱
第4章 庄司薫の逃走
第5章 坂口安吾の透明
第6章 柴田翔の消失
著者等紹介
川田宇一郎[カワタウイチロウ]
1973年東京生まれ。同志社大学文学部卒業、慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科修士課程修了。「由美ちゃんとユミヨシさん 庄司薫と村上春樹の『小さき母』」で第39回群像新人文学賞評論部門優秀賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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