一〇〇年前の女の子

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  • サイズ B6判/ページ数 290p/高さ 20cm
  • 商品コード 9784062162333
  • NDC分類 289.1
  • Cコード C0093

出版社内容情報

ここにいま、新しい「遠野物語」の誕生
命たからかに生きた少女の100年の時代の記憶。
正月にはお正月様をお迎えし、十五夜には満月に拍手(かしわで)を打つ。神を畏れ仏を敬う心にみちていた時代の、豊かな四季の暮らし。明治・大正・昭和を、実母を知らずに、けなげに生きた少女の成長物語。

これは、1人の女の子、寺崎テイの物語である。明治42年、栃木県足利の小さな村に生まれ、平成21年に100歳になった。テイは、米寿をすぎたころから、心の奥の重石がとれたかのように、幼いときの思い出を語りはじめた。生後すぐに実母と引き離されたこと、養女に出されたときの哀しさ、母恋いの想い……。と同時に、その回想の中には、高松村の四季おりおりの暮らしが、色鮮やかに立ち現れてきた。桑の芽吹きの色、空っ風のうなり、ヨシキリの鳴き声、村人の会話……。いま私は、母テイの“口寄せの女”となって、100年前に生まれた女の子が、何を感じ、何を学び、いかに生きていったかという物語を綴っていこうと思う。――著者

船曳 由美[フナビキ ユミ]
著・文・その他

内容説明

正月にはお正月様をお迎えし、十五夜には満月に拍手を打つ。神を畏れ仏を敬う心にみちていた時代の、豊かな四季の暮らし。明治・大正・昭和を、実母を知らずに、けなげに生きた少女の成長物語。

目次

実の母は家に戻らなかった
継っ子は養女に出された
筑波尋常小学校にあがった
柿若葉のころ、村は忙しくなる
秋が深まり、コウシン様の夜がくる
お正月様を迎える
冬、街道をやってくる者たち
雛の節句の哀しい思い出
懐かしい人びと
修学旅行のあとには受験勉強が待っていた〔ほか〕

著者等紹介

船曳由美[フナビキユミ]
1938年東京生まれ。62年東京大学文学部社会学科卒業。平凡社に入社。雑誌「太陽」に創刊時よりかかわり全国各地の民俗、祭礼、伝統行事を取材、後に単行本とする。85年平凡社を退社。86年集英社に入社。99年定年退職後フリー編集者(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

優希

107
昔の暮らしと共に、田舎の少女が自分の人生を自分の力で歩む姿に心打たれました。幼いながら家を離れなければならなかったなど、気の毒な生い立ちが痛かったです。再び実家に戻るなど、複雑な状態に置かれていたのだと思いました。貧しい日常でありながら、四季折々の行事など、現代では忘れ去られているような風景が浮かんでくるのが自然の中の生活という雰囲気を匂わせます。大人になり、家を出て見た世界はあまりにも知らない世界だったことでしょう。そんな親の日々を受け入れる著者が素敵だと思いました。2016/10/26

さつき

75
明治42年に栃木県の高松村で生まれたテイの生い立ちから、大人になっていくまで。四季の巡りに沿って語られる農村の暮らしが貧しくも素晴らしい。生まれてすぐ実母と別れ、里子や養子に出されたりと苦労があったからこそ生家への思い入れが強く、これだけ記憶も鮮やかなのでしょう。100年前の農家の暮らしには、田植えや井戸替え、庚申講などそれぞれに別個の組があったそう。家族だけでは暮らしを営むことは難しく、地縁が何より大切だったことがよくわかりました。現在とはまるで違う生活ですが、その名残りはまだかすかに発見できます。2019/10/21

はる

68
とても良い本だった。執筆当時、百歳になったテイさん。その少女の頃の記憶を、娘である作者が綴っていく。とにかく当時の暮らしぶりが極めて詳細に語られていて、それを読んでいるだけで面白くて飽きることがない。お盆に大晦日、お正月…。四季折々の様々な風習に、農家の仕事と娯楽。子供たちの日常。今となっては貴重な資料なのでは。幼い頃に養子に出され、学校を卒業した後は実家にいることが許されなかったテイさん。それでもテイさんの想いは常に故郷にあった。その想いがしみじみと切なく、ラストは胸が熱くなった。2021/01/23

ぶんこ

62
とても良い読書でした。認知症になった母が、自分の子どもの頃に戻って話し始めた生家での日々を、娘である著者が記した物語。終章では涙が止まりませんでした。テイさんの育った栃木県の高松村での農家の日々は、あらゆるところに神様がいらして、毎日を実に丁寧に暮らしてました。物乞いの人、お墓のお供えを子供に持ち帰る人に、恥をかかせないようにという配慮を子どもに教えるおばあさん。村八分の言葉の意味も感慨深い。産みの母から捨てられ、後妻の実家からの要求に振り回されたテイさんが、結婚で居場所と子どもを得たのが嬉しい。2021/04/30

がらくたどん

41
先日明治の炭鉱労働者の子どもとして生まれ自身も昭和の閉山まで炭鉱の仕事に従事した方の画文集を再読していて同時期のもう一つの市井の民俗史を思い出す。明治末期に栃木の農村で生まれた女性の100年の記憶をその娘さんが記録した「聞き書き」。一人の聞き取り対象からこれだけのボリュームの農村生活の記録を収集し構成した作者の根気に感動する。テイさんの記憶が自身の境遇への感情的な振り返りにとどまらず、むしろたくさんの村の祭事と仕事についての鮮明な歳時記に占められている事に驚く。村の女性は決して「従」なる存在ではなかった。2021/11/15

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