講談社文芸文庫<br> 妖・花食い姥

電子版価格
¥1,001
  • 電書あり

講談社文芸文庫
妖・花食い姥

  • ただいまウェブストアではご注文を受け付けておりません。
  • サイズ 文庫判/ページ数 311p/高さ 16cm
  • 商品コード 9784061975507
  • NDC分類 913.6
  • Cコード C0193

内容説明

深い怒りと悲しみに培われて女の内部に居据る〈業〉を凄絶に描いた「ひもじい月日」(女流文学者賞受賞)、『春雨物語』を踏まえた鬼気迫る傑作「二世の縁 拾遺」、夢幻と現実が見事に融合する「花食い姥」、ほかに「黝い紫陽花」「妖」「猫の草子」「川波抄」を収録。伝統的優美と豊かな知性が研きあげた隠微な官能、妖気を漂わせる特異の世界、円地文学傑作短篇集・七篇。

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

藤月はな(灯れ松明の火)

33
母親としての女、妻としての女、そして個人としての女が衝突し、ぎりぎりのバランスが崩れる描写の凄味に呆然とする短篇集。「黒い紫陽花」の理解と自由があることを尊重しながら息子の意志を汲み取れなかった母親としての偽善とエゴ、精神を病んでしまった息子を見捨てられない執着と息子の自死に何もかもが切れてしまった状況に移ろう様は怖くても曳きこまれるものがあります。春雨物語を根底に置いた「二世の縁 拾遺」は見知らぬ男に乱暴されそうになって夫の特徴があると感知しても否定し、入定の定助はどの男にも存在する奇妙な怖さが癖になる2013/03/27

ミーナ

22
中年以降の女性を主人公にした7編- 先月読んだ『名短篇、ここにあり』で気になった作家さん。40年前という出版当初の時代で考えると、主人公は老女と呼んでも差し支えのないであるにも関わらず、意外なことにいずれも性的なエピソードが絡む。とりわけ『黝い紫陽花』は自分の息子への欲望が生々しく恐ろしい。悲痛で嫌だからこそ目が離せない『猫の草子』が最も印象深い。いずれも明確な答えが書かれていないためか、薄暗がりの中に取り残されたような心許ない気持ちになる。1編1編が重いため読了までに時間がかかる、独特な余韻を残す短編集2016/11/12

軍縮地球市民shinshin

13
短編集。読むのに時間がかかってしまった。「くろい紫陽花」と「川波抄」そして代表作「ひもじい月日」がよかった。死の前年に文化勲章まで受章しているのだが、今日知られていない作家になってしまった。読めばわかるが、どうも主人公の女性が自立していないのだ。満たされていない生活を夫や周りのせいにしていて自分を省みていない。そこが現代では古くなってしまったのだろうなぁ。2023/05/29

夏子

10
女性の心の奥底にある激しいどろどろとした物を凄く的確に冷静に描いている怖い作品集です。決して楽しい話ではないのですが読むのをやめられない魅力がありました。2015/12/16

Kotaro Nagai

9
円地文子といえば、源氏物語の現代語訳を手がけた人としか知らないレベル。初めて読みます。昭和28年から50年までの短編7編を収録。全体的に暗い色調の作品だが、中年から老境にさしかかった女性の心理の描写が巧み。「妖」での入れ歯に関する描写、「二世の縁 拾遺」での上田秋成の「春雨物語」を絡めた恩師との交情の描写など傑出した作品と感じる。著者の幼少時の思い出を綴った「川波抄」は、古き良き江戸情緒と著者の心情を描写した文章が瑞々しく素晴らしい。2022/08/30

外部のウェブサイトに移動します

よろしければ下記URLをクリックしてください。

https://bookmeter.com/books/438667
  • ご注意事項