出版社内容情報
古代から近代に至る倫理思想の展開と社会構造の変遷を,壮大なスケールで描いた和辻哲郎の主著.本巻で扱うのは,平安末から鎌倉・室町にかけての武家が台頭する時代.武士の主従関係を支えた「献身の道徳」「神国思想」,鎌倉新仏教に顕著な「慈悲の思想」など,軍記物語や謡曲も視野に入れつつ,当時の倫理思想を抽出する.(注・解説=木村純二)
内容説明
古代から近代に至る倫理思想の展開と社会構造の変遷を、壮大なスケールで描いた和辻哲郎の主著。本巻で扱うのは、平安末から鎌倉・室町にかけての武家が台頭する時代。武士の主従関係を支えた「献身の道徳」「神国思想」、鎌倉新仏教に顕著な「慈味の思想」など、軍記物語や謡曲も視野に入れつつ、当時の倫理思想を抽出する。全4冊。
目次
第3篇 初期武家時代における倫理思想(武士的社会の形成;坂東武者の習い;公平無私の理想;鎌倉時代の神国思想;慈悲の道徳)
第4篇 中期武家時代における倫理思想(大名の出現と民衆の勢力の擡頭;神皇正統記と太平記;室町時代の文芸復興と教養の準則;謡曲に現われた倫理思想;室町時代の物語に現われた倫理思想)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ぴこ
3
2巻では荘園制の発達及び武家の台頭から、応仁の乱まで取り扱う。武士の出現により私的な紐帯による情宜的な道徳=献身の道徳ができ、人倫的道徳や鎌倉仏教の慈悲の道徳と合わせて、中世の日本の道徳観を形成してきた。皇室尊崇の意識も民衆に浸透した?が、後醍醐天皇による建武の新政は成功せず、物語や謡曲の中に見出されるのみである。解説にも有るようにこの本の政治性にも注意する必要がある。2015/06/20
ちゅん
0
Ruth Benedict氏の"The Chrysanthemum and the Sword"に 日本は「恥の文化」、西洋は「罪の文化」という くだりがありますが、「恥の文化」のルーツが 坂東武士にあるのではないかと思いました。2016/08/17
那由田 忠
0
室町時代は文芸復興の時代、平安朝の教養が蘇り民衆の間に、日本の全国的統一意識が広がる。それは、伊勢参宮であり、日本を神の国として安全ならしめる天皇の権威が広がったことでもあった。謡曲には君が代が歌われてもいる。倫理思想としては、武者の習いをベースにした、生死を共にする主君への私を捨てた献身の道徳が理想化される。源義経を支える弁慶などの郎従の物語であり、主従関係を結べなかった曽我兄弟の献身的な仇討ち物語であった。和辻は忠君を天皇自体に向けることを認めない。天皇は権威の根源だからである。2012/04/30
R
0
中世の武士の倫理観と室町時代に成立した能楽などの世界観から取材している。教科書の情報量に物足りない身としてはこうして掘り下げてくれるのはありがたい。2021/01/23