内容説明
タンポポ、ツクシ、ペンペン草。ヒバリ、カラス、「我々の雀」。「時は幾かえりも同じ処を眺めている者にのみ神秘を説くのであった。」身近な友である野の草花・鳥たちを見つめ、呼び名・昔話に人の心を読む。観察眼と叙情が溶けあう随筆集。
目次
野草雑記(記念の言葉;野草雑記;蒲公英;虎杖及び土筆 ほか)
野鳥雑記(野鳥雑記;鳥の名と昔話;梟の啼声;九州の鳥 ほか)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
翔亀
46
膨大な著作の中でもマイナーな一冊だろう。1940年初刊、2011年に岩波文庫に収められた。私にとって柳田は気にはなるが巨大すぎて難攻不落な存在。でも"野鳥"を切り口にこの巨人に少し近づけた感じ。鳥の話になると本当に楽しそうだ。子どもの頃出色の鳥好きだったが、「ほんの僅かな間の学問生活によって概念のしもべに」なった。でも「改めて天然(=鳥)を見直すような心持が出て来た」と書いたのが53才の時。徹底して鳥を観察し始める。その観察とお得意の民俗学的な考察があいまって為された柳田鳥学だ。決して雑記なぞではない。 2015/05/29
壱萬弐仟縁
23
1920-30年頃に書かれた作品集より。日本人はいやなものだけを濁音にする癖があるという。小石の堆積場はガラ、大きな石はゴロだって(26頁)。さっき読んだのはドラえもんだったな(苦笑)。ゴロゴロコミックでなくてよかった(冷笑)。蒲公英(タンポポ)の方言で、諏訪湖岸に下ると、クジナやガンボウが知られているようだ。飯田城下にはガンボ。善光寺平にはガンボジ(36頁)。他の地域の言い方も紹介されている。虎杖(いたどり)と土筆では、京都ではツクツクシまたはツクツクと呼称。 2014/09/28
モリータ
9
◆四天王寺の古本市では出ておらず、阪神間のジュンク堂でも見当たらなかったものを、西宮ガーデンズのBOOK1stで発見。もとからないだろと見くびってたのもあるが、たぶん2011年の刊行・納品から売れなかったのでは(邪推)。◆「野鳥雑記」は青空文庫で読み、「野草雑記」のみざっと目を通す。1927-39年発表の文章5篇。2022/05/08
桃の種
5
身近であった植物、鳥についての話。全国各地で彼等はその特徴から様々に命名されていた。今は色々なものが統一され、地方は没個性的になっていったように見えてくる。2023/04/12
yamakujira
5
民俗学者のエッセイ集は、「野草雑記」「虎杖及び土筆」「草の名と子供」などを集めた前半の「野草雑記」と、「野鳥雑記」「烏勧請のこと」「談雀」などを収めた「野鳥雑記」の2部構成で、庭の野草についての情緒的な随想や、バードウォッチングに出かけた思い出とか、日常雑記に類するところもあるけれど、やはり柳田国男だから、方言の分布から語源をたどったり、草や鳥にまつわる行事をひもといたり、民俗学的なアプローチに寄っていく。禍々しい伝説を生むほど、かつてはアカショウビンが見られたのなら、羨ましいな。 (★★★☆☆)2020/06/21