出版社内容情報
ありふれた日常生活の現象を鋭敏な観察力と洒脱な文章で描き出す独自の筆致で,一躍して随筆の名手との声望を得た寺田寅彦.大正後期から昭和初期にかけての中期の著作を中心に,もっとも随筆らしい作品群を集める.
内容説明
生活への省察に兆す老いの寂寥、病患を経て円熟を増した諸作品。「病院の夜明けの物音」「野球時代」「珈琲哲学序説」など『冬彦集』や『蒸発皿』に収録された作品を中心とする。
目次
病中記
病院の夜明けの物音
病室の花
浅草紙
球根
春寒
厄年とetc.
田園雑感
笑
蓄音機
断片(1)
雑記(1)
雑記(2)鑢屑
断片(2)
スパーク
年賀状
さまよえるユダヤ人の手記より
野球時代
LIBER STUDIORUM
夏
カメラを提げて
読書の今昔
鎖骨
銀座アプルス
珈琲哲学序説
空想目録
ラジオ雑感
蒸発皿
涼味数題
試験管
異質触媒作用
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Kaorie
3
最初の3話が寺田さんの病気と入院中のことを綴ったものでした。 敬愛する師夏目漱石が胃潰瘍のため危篤の際に寺田さんがお見舞いに持って行ったのがベコニアの花。 そして奇しくも夏目先生と同じ病気で自分が入院中にベコニアの花をお見舞いにもらった。 そこに何かしらの因果があるのではないかと、寺田さんでなくとも感じずにはいられません。2013/06/09
Ted
1
'97年2月刊。○凡そ100年の時空を超えて寅彦の作品に触れる。身近な出来事からの類比で、一見無関係のような分野にも同じようなことが言えるのではないか、というパターンの随筆が多い。「デパートの夏の午後」というエッセイで、寅彦がデパート入口の噴水脇のベンチに腰掛けて居眠りをしていた僅かの間に見た夢想が、現代ではWikipediaとかYahoo!知恵袋といったもので実現している。面白い。2019/10/31
いちはじめ
0
もちろん全てではないが、今読んでもはっとするようなことをさらっと書いてあったりして侮れない。着眼点は鋭いが、結論がはっきり出ていないことが多いのは痛しかゆしかな。2010/01/22