内容説明
『２１世紀の資本』で格差論の新境地を開き、大ブームとなったピケティ。途上国の貧困問題研究で二〇一五年のノーベル経済学賞を受賞したディートン。先進国における格差、不平等、福祉に関する卓越した業績と政策提言を重ねてきたアトキンソン。日本の格差問題の第一人者が彼らの研究を踏まえた上で、豊富なデータをもとに日本の格差の実態を解析する。男女間格差、正規・非正規間格差、女性の貧困、そしてこれからますます深刻化する老老格差や健康格差。理論と実態の両方を網羅した、いま知っておくべき格差問題のエッセンス。
目次
序章 なぜいま格差なのか
第１章 ピケティ、ディートン、アトキンソンを読む―格差論の現在
第２章 日本の格差の現実
第３章 富裕層への高課税は可能か
第４章 格差解消と経済成長はトレードオフか
第５章 高齢者の貧困の実相―健康格差と老老格差
著者等紹介
橘木俊詔［タチバナキトシアキ］
１９４３年兵庫県生まれ。小樽商科大学卒、大阪大学大学院修士課程修了、ジョンズ・ホプキンス大学大学院博士課程修了（Ｐｈ．Ｄ．）。京都大学教授、同志社大学教授などを経て、京都女子大学客員教授、京都大学名誉教授。専門は労働経済学、公共経済学（本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです）
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感想・レビュー
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壱萬弐仟縁
37
著者によると、格差社会も十年一昔という（１頁）。つまり、岩波の分断社会（『世界』４月号特集）の方がリアリティはある。埋めがたい溝を埋めるためには、１５年前に戻らねばならない。しかし、そんなことは不可逆的で不可能である。日本の生活保護の現状は、１６０万世帯、２２０万人。戦後の国民貧乏時代と同数（１２３頁）とは驚きである。お言葉ですが、次の指摘は納得できない。つまり、社会保障充実のため財源確保が必要な日本では、消費税率を２０％位まで引き上げること。2016/06/02
masabi
20
伝統や制度の名の下に国家が本来行うべき公教育や社会保障への支出を家庭や企業に押し付けてきた。経済が好調だったために矛盾は隠されてきたが、バブル崩壊と以後の経済状況から民間側にも余力がなくなったので、矛盾が現れ始めた、と言えそうだ。豊富な資料と先行研究を基に雇用における格差、男女間、高齢者間の格差に至るまで広く格差を扱う。格差是正の方向やその手段についての国民的議論と同意、各々が痛みを受け入れる覚悟が必要になる。2016/06/14
isao_key
11
様々な格差の実態についてデータを示して説明している。諸外国との違いもよく分かるように書かれている。賃金格差について男性の非正規労働者の賃金は正規労働者の約6割、女性の場合は約7割。男性の方が格差が大きい理由は、男性の正規労働者の中には管理職に就いている人が多く、女性に比べて正規労働者の賃金が高く女性は管理職が少ない分賃金も低い。国会議員の女性比率は2011年の統計で平均19.3％に対して日本は11.3％と圧倒的に少ない。女性経営者は2010年の統計でヨーロッパがほぼ10％以上に対し、日本は1.4％である。2018/07/07
Humbaba
6
完全な平等というのは理想ではあっても現実的には不可能である。生まれてから一人立ちするまでに与えられる資産は、単純な金銭的なものだけでなく教育環境や愛情など、数値化が難しい物もあるため、多少の差が出てくるのは避けられない。しかし、数億円を越えるような圧倒的な差が最初からあるのは明らかに平等から反している。2016/06/02
パーやん
2
流行の格差問題の是非論。色々なデータが整理されて紹介されていたのは有用なのかもしれないが、個人的には猫に小判^^;。それよりも…税や社会保険料が労働供給に与える効果を計測するには税金などの情報を含んだ労働供給の実態を調査したデータが必要になるが、我が国では検証に必要なデータが公表されていない、欧米では分析データが個票として利用可能であるのに我が国ではできないのである…かつては（2004年まで）全国高額納税者名簿が公表されており業種・出自等の分析が可能であったが今では非公開なので…と云うクダリにあれって云う2016/06/04
